拍手御礼小説
□拍手文2 〜ナスティ×征一郎のある日です〜
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珍しく残業もなく仕事を終えた、金曜日の午後19時。
飲みに行く同僚達を見送りながら、駅の改札を出た。
『お前最近、付き合い悪くなったよな〜。もしや彼女できたのか?』
しつこく飲み会に誘ってくる同僚は、最後までそう言ってしつこく絡んできた。
「……彼女じゃなく、彼氏だ。バカ野郎」
言えるわけない。
可愛らしい彼女…ではなく、カッコイイ彼氏ができただなんて。
しかも彼氏は同じマンションの隣人で。
事あるごとに部屋に入り浸り、ほぼ同棲しているようなもんで……
昨夜だって、深夜に突然来たと思ったら、『セーイチの中で眠りたい』などとほざき、結果、朝まであれやこれやと口では言えない事をされ…
「ハッ! イカンイカン!!」
昨夜の奴の無体を思い出すと同時に、言わされた数々の恥ずかしい言葉が脳裏に蘇り、ブルブルと頭を振る。
「今夜は久しぶりに一人でゆっくりできるんだ。奴の事は忘れろ!」
そう。
ほぼ毎日と言っていい程に顔を合わし肌を合わせている…コホン、彼氏・ナスティは、今夜は職場で飲み会だとかで不在だ。
何でも、奴の働く店が入る商店街の親睦会だとかで、結構な人数が集まるらしい。
「久しぶりにDVDでも借りてきて見るか…」
のんびり過ごす夜があっても、たまにはいい。
何てったって、明日はサラリーマンの休日だ。
一人でする夜更かしなら、大歓迎だ。
そう思い、レンタルビデオ屋に向かったのだが、近くにある公園の前を横切った瞬間、思わず足を止めてしまった。
「…うわっ」
目に飛び込んできたのは、見事なまでの桜並木。
うっすらとライトアップされて幻想的な美しさを放つ桜に、俺はしばらく言葉も忘れて立ち尽くしていた。
「綺麗…」
………だが。
「ほう、ナスティさんの恋人さんはそんなに美人さんなんかい?」
「とびっきりの美人だよ! 強気でプライドも高くて料理も上手で、何より『トコジョーズ』!!」
「!!!!」
耳に飛び込んできた聞き慣れた男の声と衝撃の言葉に、俺は文字通り目玉が飛び出るくらいに驚いた。
今、ええ?
な、何て?!
「いつもは背筋がピシッと伸びててカッコイイのに、ボクの腕の中では信じられないくらいにカワイイんだ〜。アンアン鳴きたいのをグッとガマンしてる顔を崩したくて、ついついムリしちゃうんだけど、いつもこっちも絞りとられそうになるんだ」
お、お前〜!!
何て事を言いやがる?!
ギギギギ、と恐る恐る公園の中を覗けば、ブルーシートの上で花見を楽しむ一団が。
老若男女入り交じり、大勢の人間が楽しげに夜桜を楽しんでいる中、そいつはいた。
「お前さん、そんな『床上手』なんて日本語、よく知ってたね?」
「え、相思相愛のアイテの事を誉める時に使う言葉じゃないの?」
「やだ〜、ナスティさん。彼女にそんな事言っちゃ、フラれちゃうわよ!」
愉しげな輪の中心にいる頭1つ分飛び出ている男は、間違いなく俺の彼氏!!
「え、ウソ? そんなのウソでしょ! ちょ、今セーイチに確認するね!」
慌てた金髪の大男が、ズボンのポケットから携帯電話を出してボタンを押すのを、俺はなすすべもなく見ていた。
プルルルル
「!!!」
途端に鳴り出す、俺の携帯電話。
や、ヤバイ!!
我に返る、俺。
「ん〜? あれ、セーイチの電話の着信音聞こえる…」
地獄耳な、俺の彼氏。
「今、セーイチって言ったよね? ウソっ、ナスティさんの恋人って男!」
「ほほう。プライドも高く料理も上手な、飛びっきりの美人で床上手な『彼氏』か…」
ナスティの恋人=俺に食い付く、商店街の住人。
「……もしかして、近くにいたりして?」
キョロキョロし出したナスティやその他の奴らに俺が見つかるまで………あと3秒!
ぎゃああああ!!
お粗末様でしたm(__)m
2012.4.10〜6.20