拍手御礼小説

□拍手文5〜高史×要
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「あら、二人で買い物? 仲が良くていいわね〜」

娘の愛と学校帰りにスーパーに寄っていると、久しぶりに会う知人に声をかけられた。

「愛ちゃんももう中学生か…」

しみじみ、といった感じで制服姿の愛を見つめてくる彼女は、亡くなった妻を知る数少ない人物で。

「今、いくつなの?」

「中学生2年生。14歳です」

「もうそんなに大きくなったんだ! お母さんそっくりで美人だし、お父さんは気が気じゃないわね〜」

「「え?」」

「あら、だってもう2年もすれば高校生じゃない? すぐに彼氏の1人や2人できるわよ」

「!!」



可笑しそうに笑う彼女に、僕はショックのあまり返事を返す事ができなかった。

「パ、パパ? 大丈夫?」

家に帰ってからも、頭の中をグルグルと回るのは『もう2年もすれば彼氏の1人や2人』というフレーズばかりで、心配そうに見上げてくる愛の顔をまともに見る事ができなかった。


「あのオバサン、余計な事を…」

だから気付かなかった。
愛がチッと舌打ちした後、携帯のボタンをポチポチと押していた事を。



…ブブブ、ブブブブ

「…ん?」

ジャケットのポケットに入れていた携帯電話が、着信を知らせている。

「…はい?」

誰からの着信か確かめもせず、うなだれたまま電話に出る。

『…要』

「高史君っ」

まさかの恋人からの電話に、僕の胸がドキリと跳ねる。

『…今、大丈夫か?』

「え、だ、大丈夫だよ! どうしたの、急に?」

高史君は無口で無愛想で少し強引だけど、心優しい僕の彼氏。
お互いに同姓と付き合うのは初めてなんだけど、色々あって惹かれ合って今に至る…。

彼はまだ高校2年生だけど、僕は三十路のしがない子持ちサラリーマンで、これ程釣り合わないカップルはいないだろう。

でも。彼は僕がいいと言ってくれる。
僕がほ、欲しい…僕を抱きたいと言って、初めて抱かれたのはつい何日か前で…

『要の声を聞きたかったんだ。…身体、大丈夫か?』

「!!! だ、だだ大丈夫だよ!」

電話口とは言え、何て事を聞くんだ!
恥ずかしくて顔から火が出そうだ!

『……元気ないな? 何があった?』

「え?」

何かあったのか、じゃなくて何があった? って、僕に何かがあったって断定してるし。

『要は分かりやすいからな。声で分かる』

「えっ、あ〜そっかあ…」

そこまで言われれば、口にしない理由はどこにもない。
僕は自然と、先ほどの出来事を高史君に漏らしていた。


『……』

話し終えると、返ってきたのは無言だった。

「…そりゃあ、僕だって分かってるよ。いずれ愛は嫁に行くんだって! でも、まだまだ僕の目の黒いうちは、彼氏なんか認められないって言うか…」

『……』

「あんなに可愛くて優しくて非の打ち所のない子だから、そこら辺の男なんかに渡せないし! ああ、でももしそんな奴が『娘さんをください』とか来やがったら、とりあえず殴ってもいいよね?」

『……要、真一をどう思う?』

「ん? 高史君の友達の? 彼、外見は不良だけどいい子だよね。 彼女はいないけど、好きな子はいるって言ってた。一途なんだね。あんな子に好きになって貰える女の子は、幸せだよ〜。早くその子と上手くいけばいいのにね」

『……』

「そういえば、愛とも仲がいいみたいで、よく電話で話してるみたい。もしかしたら、真一君の好きな子って愛の友達なのかな?」

『………鈍感(ぼそり)』

「ん? 何か言った?」

『いや。……それだけ喋れたら大丈夫だな。』

「あ、本当だ。ありがと。何か聞いて貰ったらスッキリしたよ」

『そうか…。………だかな、要』

「え?」

『愛も、いずれは要の元を離れて嫁に行くかもしれん』

「っ!」


『けど、その前にお前を俺が貰うから大丈夫だ』

「!!!」

『お前が寂しさなんか感じられないくらい、嫌って程愛してやるから、覚悟しとけ』

耳元で聞かされた強烈なプロポーズに、僕は思わずへなへなと床に座り込んでしまった。





『…………ちなみに拒否は受け付けないからな』


終わり 2012.2.29
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