拍手御礼小説
□PON缶オールスターズ〜ラブラブ?デート編〜
2ページ/44ページ
(テツ×環の場合)
いつものように土曜の早朝トレーニングを終え、食堂の中に入ってきた俺は、きょろきょろと栄さんの姿を探していた。
「あれ、…いない?」
でも、いつも「朝ご飯食べましょうね」と優しい笑顔で出迎えてくれる管理人・栄さんの姿はどこにもなかった。
食堂の中は、がらんとしていて人の気配が全くない。
「あ、環君…」
「おい、純也。栄さんは?」
「あ、それが急に実家の方で不幸事があったらしくて、十三郎さんと一緒に里帰りしたんだ」
「え! 不幸事?!」
「うん。叔母さんが亡くなったとかで…。帰ってくるのは、週明けになるみたい」
「そうか…」
いつも世話になっている管理人親子(正確には姑と嫁だが)に不幸事があったと聞き、俺は眉を潜めた。
「朝ご飯は、おにぎり握ってるから、それ食べてって言ってたよ」
「栄さん…」
どんな時でも自分達の事を考えてくれている人に、思わず熱いものが胸に込み上げてくる。
「お〜い。イケメン代表の耕一君が帰ってきましたよ〜」
その時。
玄関先が賑やかになり、ドカドカと足音が食堂に近付いてきた。
「お前、また朝帰りか…」
「あれえ? 妬いてるの、環チャン」
「てめえ…」
「カワイイなあ、やっぱり。あんな何考えてるのか分からない奴なんかやめて、俺に乗り換えるか?」
「黙れ」
「あんな奴より、テクもあれもかなりいいもんもってるし?」
これ以上、聞いていられずに拳を奮おうとした瞬間。
「先輩に触んな」
シャワーを終えて食堂に入ってきたテツが、すっと俺と耕一の間に立った。
ぬっと現れた巨大な壁に、以前なら口惜しさを感じていたが、今はどことなく安心感を覚える。
絶対に口に出して言う事はないが。
.