03/06の日記

22:17
全権監督と超次元サッカー【誰得ネタ】
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ぶっちゃけ誰特だけど。サカつく×イナイレ。



「全権監督」

 それはクラブにおける経営、人事、試合等のありとあらゆる権限を与えられた存在である。今日の世界においてもその存在は珍しい。その物珍しさゆえに彼は注目を集めた。

「全権監督」

 そう呼ばれたジャケット姿の男はその時、ベンチの端で涙を流しながらピッチの上でトロフィーを掲げる選手達を見ていた。WプレミアD1優勝。マンチェスターのオーナーであるエストデーラ氏が各国の有力クラブを集めてリーグ戦を行うその舞台で今年世界一の栄冠を勝ち取ったそのクラブは極東の島国日本の片田舎、青森のクラブだった。
 最初はプロかどうかも疑わしいようなレベルだった。彼も話題ばかりが先行して実績は全く残してなかった。観客席からゴミを投げ入れられる事もあった。それが段々と勝ち星を増やしていき一部リーグに昇格してJリーグを制してアジアを制してついには世界を制した。
 彼の隣ではクラブ初のスター選手で代表GKにもなり、今は彼の右腕となった男が彼と同じように泣いていた。みんなみんな、泣きながら目の前の夢のようなまぶしい光景を見ていた。
 その光景を目に焼き付けると彼は今誰の目にも自分が映っていない事を確認するとピッチに背中を向けてロッカールームに足を向かわせる。今日の主役は自分ではない。偉業を成し遂げたのは選手達であって自分ではない。邪魔者は退散しよう。
 秘書が涙で化粧をぼろぼろにしながら彼の方に歩みよる。

「おめでとうございます、監督」
「ありがとう。自分でも信じられないね。夢みたいだ」
「あなたが叶えたんですよ、夢を」

 彼は秘書の言葉に少年のようにはにかむとその横を通りすぎた。静かに拳を振り上げて……

「いよっしゃぁ、やってやったぜ」
「まだまだ予定は山積みです。記者会見に今季の収支報告、パレードの準備、むしろ忙しいのは」

抱え込んでいた感情を顕にした。微笑ましそうに振り返った秘書の目には彼のジャケット姿はもう見えなくなっていた。

 

 目を開けると目前に広がっていたのは青空だった。ふかふかの芝と心地よい風が頬を撫でる。どこだろうか?ここは?
 下の方からは子供達の楽しそうな声と聞き慣れたボールを蹴る音がする。声は日本語でここが日本であることを確信させる。
 祝勝会で酔っ払って外に来てこんな所で寝ていたのだろうか?それにしては二日酔いのような重い症状は表れていない。
 ならなんなのだろうか?そう思いながら考えるのを放棄し始めた。最近忙しすぎたしたまにはこんなことも許されるだろう。
 秘書の彼女がぎゃーぎゃー文句を言うことが容易に想像できるがそれを頭の隅に追いやる。
 子供達の試合を眺めてみる。ボールホルダーの少年が最後のディフェンスを振りきりキーパーと一対一になっていた。
 キーパー飛び出すだろ、ゴール前張り付いてんなよ。シュートコース塞げよ。何で構えてんだよ……そう思うとボールホルダーの少年は何を思ったかボールを蹴りあげ足に炎を纏わせ飛び上がる。キーパーの少年もなにやら手にオーラのようなものを纏っていた。
 なんだよ……これ。基本もセオリーもあったもんじゃねぇ。でも年甲斐なく興奮してる俺がいた。

「いいもん見せてもらったよ。少年」

 軽く拍手をしながら河川敷の土手を下に降りて少年達に近づく。少年達は訝しげや不審者を見るような目で俺を見てくる。ただ一人、さっきキーパーをしていた少年を除いて。
 キーパーの少年は楽しそうに笑って俺を見てる。

「あぁ悪いな、練習の邪魔して。」
「別にいいよ。おっちゃんは俺達になんか用?」

 おっちゃん呼ばわりされる年齢ではないはずなんだが……少しその事を不満に思いながら俺は少年に言う。

「いや、特に用じゃないんだが……楽しそうにサッカーするからな。サッカー、好きか?」

 俺の言葉に少年はニカッと笑い俺にいった。

「もちろん、大好きだぜ。おっちゃんは」

 その言葉に俺もニヤッと笑う。

「嫌いなように見えるか?」

 それが世界を制した全権監督と少年、円堂 守との出合いだった。


サカつく、SEGAのゲーム、プロサッカークラブをつくろうシリーズのこと。
全権監督、サカつく7以降のサカつくにおけるプレーヤーの役職。試合指示、交渉、育成なんでもござれの人。
なんでこんなの書いたか、Jリーグ始まって舞い上がって書いた。

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