銀魂

□初恋記念日
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最悪だ。こんなの最悪すぎる。このバカヤローめ。ふぐり腐らせて死んでしまえ。アンタなんて最初から好きじゃなかった。小さく悪態をつきながらも目の前の光景に涙が止まらない。だっておかしいじゃん。今日付き合って一年目の記念日なのに。わたしの誘い仕事が忙しいって断って、なんでそんな綺麗なオネェさんと歩いてんの。わたしにだってたまにしか見せない心からの笑顔をみせて腕組みして。しかもわたしがあげたネックレス着けてるし。わたしのあげたもの着けたままなんでもお願い聞いてやるなんてなんで訊くの。オネェさんも妖しく笑って此処でキスして、なんて 恋人みたいじゃないか。あぁ、二人の影が重なって周りから関心と視線が集中する。あそこにいるのはわたしのはずなのに。なんで、なんで、なんで。

「どうかしましたか?」

肩を叩かれ振り向けば知らない男の人。ほっといてください。大丈夫ですから。そういって持ってたハンカチを取り出して止まらない涙を拭おうとした。が、

「っ、」


アイツから貰った初めてのプレゼント。思えば告白はあっちからだった。わたしも嫌いではなかったし、誠実な人だと思ったから付き合った。アイツに対するわたしの気持ちは一年たっても変わらなかったが、記念日に会えないなら気分だけでもと思ったのが間違いだった。こんなの使えない。もう、使う権利がない。

「どうぞ、」

差し出されたハンカチは少しクシャクシャで、顔を上げたら男の人は恥ずかしそうに言った。

「え、と、すみません汚くて…。あ、いやでもまだ一回も使ってませんから」

そう必死に弁解するように言って無理やりハンカチを押し付けてきた。それがまた一生懸命なもんだから、少し笑ってしまった。そしたら男の人も照れ臭そうにあはは、と笑ってくれた。

「…あなたは」

「?」

「笑ってるほうがずっといいですよ」

ハンカチはまた今度でいいです。そう言って赤い服で下駄を履いた色付眼鏡の癖っ毛頭のお兄さんは何処かへ行ってしまった。わたしはというとさっきまで止まることのなかった涙はあっさり止まり、抑えようのない熱だけが身体に残った







初恋記念日
(ーーってのが初めだったんだよねー)(懐かしのう。ほれ、)(ん?ーー…っ!)(これで今日は婚約記念日じゃ!)

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