‡REBORN‡
□人形のお披露目
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カタカタ、と馬車が揺れる。
ツナはディーノの横に座ってぼんやりと外を眺めていた。
街からでたことのないツナにとってそこに広がる景色は初めて見るものだったけれど、その美しさに感嘆している余裕は彼にはなかった。
これから自分がどこに連れていかれるのか、ディーノに説明されていたからだ。
骸、という男の開く夜会に行くのだという。
彼は莫大な財産を持っていて、さらには国王の親戚らしい。
失礼のないようにな、とディーノに言われてしまい、ツナは今から緊張していた。
生まれてこのかた、貴族の集まりなどでたこともないのにいきなりそんな人に会わなくてはならないなんて。
ツナはぎゅっと手を握った。
そんなツナをディーノは何も言わず眺めていた。
ディーノはこれからのことに思いはせていたのだった。
今夜、彼は骸に対し、ツナを“使おう”と思っていた。
どういうわけか骸という男は自らも貴族であるくせに貴族というものを激しく嫌っており、取り入ることができないのだ。
それを多くの人々は苦々しく思っておりディーノもまた同様だった。
―でも、ツナなら。
懐柔できるのではないか、なんて思った。
「よぉ。今日は招待してくれてありがとな」
骸の屋敷についたディーノは人ごみから離れたテラスで、嘲るように彼らを眺める彼を見つけた。
骸は良くも悪くも目立つ。
双色の目、という独特な容姿で、それを薄気味悪いという人もあったが、たいていの人間は“美しい”と称した。
骸はちら、とディーノの方に目をやると
「キャバッローネは将来性があるので親睦を深めておこうかと思いまして。それだけです」
親睦を深める、などといいながら骸は恐ろしく愛想がなく、まるでディーノを怒らせようとしているかのようだった。
骸にはこの国の貴族のほとんどを敵に回したところで困らないくらいの力があるから平気なのだろうが……。
「おいおい、そんなこと言っていいのかよ」
思わずディーノも言ってしまう。
「邪魔になったら潰しますから」
本人を前にしてさらりと言ってのける骸。
これには温厚だと有名なディーノも黙るしかなかった。
骸には会話を続ける気はないらしくさっさとあの中にでも行ったらいいだろうと言わんばかりに室内に目を戻した。
そんな骸に
「あのさ、今日はおまえに見せたいものがあるんだ」
とディーノは言う。
「見せたいもの?宝石やなんかはいりませんよ」
骸は相変わらず気のなさそうに返答する。
いや、とディーノは首を振った。
「人形だ」
琥珀色を思いながらうっとりとその単語を唇にのせる。
「人形?」
さすがに予想外で、思わず骸が尋ね返した時、ディーノはすでにいなかった。
「…………」
謎めいた言葉が気になって仕方がなかった。