‡short story‡

□架空未来
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もう何の縁もない男と、ずるずると身体だけは繋いでいた。
彼は中学時代の先輩に過ぎず、優秀な彼と“ダメツナ”とからかわれるような綱吉とでは高校も大学も違う。
本来ならば今は一切関わりのない筈の人間。
いや、中学の時からそうだった。
風紀委員長である彼とごくふつうの生徒である綱吉。
綱吉が彼を畏怖の対象とすることはあれど、彼が綱吉に興味を持つなんて有り得ないことだった。
普通ならば。
しかし、彼はどうしてだか綱吉を気に入ったらしくたびたび呼び出してきた。
それは彼が中学を卒業してからも、綱吉が高校生になってからも、大学に行きだしてからも変わらなかった。
今の綱吉は街にある小さな会社に勤めだしていた。世界に名の広まる企業に就職した彼とは全く違う。
けれど、彼は変わらず綱吉を呼び出すのだった。
もう翌日になろうという深夜に突然やってきたこともあった。

――ヒバリさん!?

驚きのあまり硬直する綱吉に彼はなんて事はないように疲れたんだ、と言って部屋にあがりこんできた。
相変わらずの横暴ぶりだと思った。ただそんなに嫌ではなかった。



彼が自分を離そうとしないのは“相性”がいいからかもしれない、と思う。
綱吉は彼を受け入れることに快感を覚えるようになっていたし、彼も一回のセックスで何度も綱吉の中に射精した。
雲雀と綱吉は時間さえあれば、身体を重ねた。
それは今日も同じだった。綱吉は会社が終わったらすぐ、彼に会いに来るよう言われた。
もはや当たり前すぎてその特異性すら気にならなくなっていた。
自分のアパートに帰るのも面倒でそのまま彼の家に向かった。
チャイムを鳴らす。
彼はすぐにでてきた。綱吉は失礼します、と頭を下げて中に入った。
案内されずとも自分の家のように部屋の配置も家具の配置も分かる。
雲雀といつも過ごす寝室へと歩いていく。彼が後ろからついてくるのを感じて心臓がどくん、と跳ねた。
雲雀の方は至って平静で、今日はどうだったの、何て他愛のないことを聞いてきた。
そんな些細なことでも、何故だか嬉しくて綱吉は変わり映えのない日常から少しでも愉快なことを探して喋った。
振り返ってみれば、雲雀はわずかに口元を緩めていた。
それからも綱吉と雲雀は二言三言交わしていたが、どちらともなく口付けをし始める。
立ったまま始めたものがいつのまにか舞台をベッドに移していた。

――綱吉。

甘くてどこか切羽詰まったようなかすれた声でそう呼ばれた。
堕ちるのに時間はかからなかった。



あんなにも普段冷静でどこか遠い人にさえ感じる彼だけれど、自分に触れる身体は熱を帯びていた。
突き入れられて感じる彼の雄は綱吉の中をどろどろに溶かしていく。

「ぁ……だめ、ヒバリさんっ」

綱吉は嬌声まじりに叫んだ。
ぐちゅ、といやらしい音を立てる結合部。
がくがくと揺さぶられる衝撃に耐えられなくてぎゅっとシーツを掴む。
雲雀の家は安普請な綱吉の家と違って、声を我慢する必要はなかった。
それでも、雲雀に聞かれているのかと思うと恥ずかしい。

「……堪えなくていいのに」

――綱吉のやらしい声もっと聞かせてよ。

そう囁いてきたかと思えば彼はさらに強く綱吉の中を突き上げだした。
綱吉の身体はびくんとしなる。

「っあ、……そこ、だめっ」

ただでさえ感じやすいと揶揄される身体なのにその中でも特に敏感な部分を刺激されて綱吉はおかしくなってしまいそうだった。
それなのに、身体はさらに彼を求めるように淫らに揺れる。

「もっと欲しいの?」

わずかに笑みを含んだ声で雲雀は囁いてよこした。
その言葉にすら身体が疼く。

「ぐちゃぐちゃに……して、欲しいです……ヒバリさんの…で……」

恥じらいだとか、そんなものはもはや綱吉の中から飛んでいた。
彼の精神は雲雀に与えられる快楽に屈服していた。

「君は……いつからそんな誘い文句を覚えたんだい」

綱吉の媚態に煽られたかのよう雲雀の声にも欲望が混じる。

「ヒバリ、さんが……教えたんです……よ?」

「僕が、ね」

雲雀は満足したように呟く。

「いいよ。ぐちゃぐちゃにしてあげる」

言葉と共に、彼の刻む律動は速度を増した。

「は、……あっ!や、んん…ん……あぁっ」

綱吉にはもう漏れでる声を抑えることはできなかった。
綱吉、と彼に名前を呼ばれるたびに自分の中がとろけていくのが分かる。
挿れられては抜かれ、また奥まで突き入れられて。
そのたびにひくと蠢く内壁を刺激される。
綱吉はもう何が何だか分からなかった。
ただ彼に導かれるままに高みへと近づいて行った。

「あっ、……ヒバリ、さん!イっちゃう、イっちゃう!!」

綱吉は夢中で叫ぶ。
その身体がびくびくと痙攣した。
瞬間。
綱吉は真っ白なシーツに白濁を放っていた。

「っ」

雲雀が小さく呻くのが聞こえた。
中に精液が吐き出されるのを感じて、綱吉はまたうっとりとする。
が、いくら経っても抜かれる気配がない。

「え?」

「“もっと欲しい”んでしょ」

雲雀の囁くような声には熱が秘められていた。
綱吉は高ぶらされた身体がすぐに反応するのを感じた。
こくん、とうなづいた彼のうなじに雲雀は優しく口付けた。





心地よい倦怠感が綱吉を包む。
綱吉は雲雀の腕に抱かれるようにしてベッドに横たわっていた。

「綱吉」

彼の吐息が耳朶に触れる。
綱吉の身体がびくんと震えたのが可笑しかったのか彼はクス、と笑った。

「今、感じた?」

綱吉は恥ずかしくなってそっぽ向く。

「可愛い」

「まさか」

「僕は嘘は吐かないよ」

綱吉を抱く腕の力が強まる。
綱吉はそれにうっとりと身を委ねた。

「あのね、綱吉」

呼びかけてくる言葉にどこか夢見心地で、はい。と答える。

「明日から僕はイタリアに発つ」

「…………え?」

いっきに現実に引き戻されたような気分だった。

「イタリア、ですか……?」

雲雀の勤める企業は規模が大きいから海外とも取引があるのは分かる。
雲雀がまだ若いながら重要なポストについているらしいから、それを行う立場であることも分かる。
分かるのだが……。

「どうしたの?」

黙りこんだ綱吉を訝しむように尋ねてくる。
雲雀がこちらをじ、と見ているのが痛いくらいの視線で分かった。

「さみしいです」

綱吉はぽつ、と呟く。

「ヒバリさんに会えない、なんて」

今度は雲雀の方が沈黙した。
呆れられたのだろうか、と恐る恐る顔をあげてみる。
と。
口付けられた。

「ん、んんっ!?」

すぐにその唇は離されて、雲雀は微笑んだ。
そんな彼の表情にすらどき、としてしまう自分がいた。

「一週間で帰ってくるよ」

一週間すらも長いと言ったら笑われるだろうか?
そんな綱吉の心に気がついたのか、雲雀は約束しよう、と言った。

「毎日、君に電話する」

「……絶対、ですよ?」

真剣に言ったのに、何がおかしかったのか彼は頬を緩めながら言った。

「絶対だよ」

綱吉は雲雀にぎゅぅと抱きついた。
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