‡REBORN‡

□歌
1ページ/7ページ


ざわざわと草や花が風に揺れる。
その風と共鳴するよう辺りには美しい歌声が響いていた。
歌っているのは異国の血を引くのか全体的に色素の薄い少年だ。
少女と言っても通りそうな程に愛らしい顔立ちで体つきもまた華奢だった。
その側では別の少年が目を閉じて聞いていた。
こちらも非常に整った顔立ちの美しい少年である。
ざわり、とふいた風が彼の黒髪を揺らした、が少年は気にせずに歌に耳を傾け続けた。
その少年の肩に一羽の小さな鳥が飛んでくる。

「帰ロウ、帰ロウ」

とその肩の上で盛大に鳴く。
少年は鬱陶しそうに目を開くと早くも薄暗くなり始めている空に整った顔をしかめた。
そんな表情にもどことなく品があった。

「綱吉」

少年は口を開く。
呼ばれた少年は歌うのをやめ

「どうしたんですか?恭弥さん」

と尋ねた。

「もう帰るよ」

そう言った恭弥に、えー、と口を尖らせる。

「もう帰るんですか。オレもう少し歌っていきたいです」

可愛らしくそんな風に言われれば恭弥に止めることなどできるはずもなく。
ふぅ、とため息をつくと

「あと少しだけだよ。一曲歌ったら帰ってきなよ、暗くなるから」

と言った。
僕は先に帰って夕食でも準備しておくよ、と付け足してやれば綱吉はパッと顔を輝かせた。

「わぁっ。ありがとうございます、恭弥さん!!今日は何の料理なんですか?」

恭弥は古今東西様々なものを作っては綱吉に食べさせてくれていたのだ。
食事は綱吉の大きな楽しみの一つでもあった。
そんな綱吉の様子に微笑しながら

「帰ってきてからのお楽しみだよ」

と恭弥は言った。
いじわる!というようにこちらを見てくる綱吉の頭を軽く撫でてやる。

「じゃあまたあとでね」

恭弥は家へと歩き出す。綱吉と二人で暮らしている家に。
後ろから彼の歌声が見送るように響いてきて知らず口元が綻んでしまった。



一見平和な光景だったけれども夜闇は確かに近付いてきていたのだった……。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ