‡REBORN‡

□死神
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そっとベッドを抜け出して外を眺めていた綱吉は階下から足音が近付いてくるのに気がつきあわてて戻る。
ベッドの中に落ち着くとさっき見た男を思い返してしまった。
不思議な人だったな、と思う。
窓からそっと覗いているだけの自分に気が付いているようだった。
尚も思いに耽ろうとする綱吉をギッという扉の軋む音が現実に引き戻す。

「骸……?」

おそるおそる呼んでみる。
彼を一目見て恐ろしく機嫌が悪いのだ、と分かったからだ。
綱吉にとって苛立っている彼ほど怖いものはない。
早く機嫌を直して欲しかった。

「どうしたの?」

内心の怯えを隠してできるだけいつも通りに尋ねる。

「どうもこうもありませんよ。……全く、腹立たしい」

基本的に冷静な人間である彼がこうして憤りを露わにすることは珍しかった。
いったいどうしたのだろう、と綱吉は思う。

「本当に……」

と何か言いかけ骸はさすがに感情的になりすぎたと思ったのかふぅ、と息を吐いて一呼吸おく。

「……あぁ。僕は馬鹿ですね。君がここから逃げられる筈などないのに」

骸は妖笑を浮かべて言う。
打って変わって穏やかになる彼に綱吉はゾッとせずにはいられなかった。
そう。
確かに綱吉にここを逃げ出すことなど叶いはしないのだ。
もう何年も外にでることはおろか部屋を歩き回ることすら許されなかった彼に長い間歩くことなど出来なかったから。

「あの男と話していると君が消えてしまうようなそんな気がして仕方なくなってしまったんです」

綱吉はあの男、とは先ほど目の合った変わった人のことだろうか、と考える。
骸はそんな彼をぐいと抱きしめた。

「くるしっ……」

強すぎる力で抱きしめられて骨が軋んでいる。
しかし、綱吉が訴えても骸は手を緩めなかった。
それどころか力が余計に加わったような気すらする。
折れてしまっても構わない、というよりもむしろ、折れてしまえばいいと思っているに違いなかった。
身体が壊れれば壊れるほど綱吉では1人では生きて行けなくなり、そうすれば骸を頼らざるを得ないから。

「骸、おねがい」

綱吉は懇願する。
強い口調で言ったり拒絶することができないのは彼を嫌いにはなれないためだ。
出会った時の骸は本当に優しかった。
父母を交通事故で突如失った彼を遠い親戚だというだけで引き取り、住む場所と暖かさをくれた。
そんな彼を綱吉は愛していた。
どこでどうしてその関係が崩れはじめたのか綱吉には分からない。
分かるのはこのままではお互いの為にもよくないということだけだ。
どんどん行動をエスカレートさせていく骸。
そんな彼に怯えつつも憎むことなど綱吉にはできないのだった。
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