‡REBORN‡

□赤と黒
2ページ/13ページ


1:バスタブにうかぶ血塗れのソレ



「京子ちゃん。今日オレの誕生日会することになったんだけど……来れる?」

いきなりかかってきた電話。
それは中学の同級生だった男からだった。
急すぎるお誘い。
京子は驚いた、が、どんな仕事までだかは知らないけれども彼がとても忙しいのは知っていたし彼がわざわざ自分に声をかけてくれたのが嬉しかった。
本当は今日は用事があったけれどもキャンセルしてしまうことにして

「行けるよ」

と返答する。
すると電話の向こうでツナは安堵するように息を吐いて会場の説明を始めた。
ツナが名を口にしたのはここの辺りで最も評価の高いホテルで、どうやらそこにあるフレンチを貸し切ってする予定のようだった。

―何か遠くなっちゃったな……。

相変わらず、獄寺や山本とは仲が良いみたいで同窓会も一緒に来ていたが前のように同じクラスにいて挨拶を交わし合った彼とは少し違っていた。
ふとした時に見せた表情なんかは氷のような、という比喩が洒落にならないくらいで。
けれども、京子はツナが好きだった。
だから、彼が

「あのさ、パーティーが始まるまで久しぶりに話せたりする?」

と言ってきた時はまた驚かされたが本当に嬉しかった。
ただ、言葉がでるまでに時間がかかってしまって。

「ぁ……、ごめん。迷惑、だったかな」

寂しげに言われて京子は慌てた。
そんなツナの様子を懐かしいな、とどこか思いながらも

「ううん。びっくりしちゃっただけだよ。どこに行ったらいいのかな」

と言う。

「下に美味しいカフェがあったからそこでどう?リボーンの折り紙付き」

「わっ、すごそう」

クスクスと笑い合う。

「じゃあ、そこで。オレは2001号室に泊まってるから何かあったら」

「うん」



誕生日会は19時からだったが、カフェでの待ち合わせは15時だ。
今から着替えて……、プレゼントを買って……と京子は時計を見ながら考える。
忙しそうだけれどワクワクしてきた。



結局プレゼントは時計にした。
高価なものにはとても手がだせなかったけれども文字盤にはめ込まれた石の穏やかな輝きが彼に似ているだなんて思って選んだのだった。
それからカフェについたのはいいがどうやら早く来すぎてしまったようだった。
まだ一時間以上もある。

―張り切りすぎちゃったな……。

京子は注文したアイスコーヒーを飲みながらツナが来たら何を聞くかを考えた。
それに対する彼の答えをふわふわと空想する。
それだけで幸せだった。





カランと氷が音を立てた。
ストローをすってもコーヒーはあがってこない。
どうやら空になったようだった。

―あれ?

京子は思った。
もうずいぶんと時間が経っている気がする。
時計を見てみれば、もう15時半を回っていて。

―あ……。私またぼぅっとしちゃった。

あぁして約束をしてきたツナがすっぽかすとはとても思えなかった。

―どうしたんだろう?

京子はツナの言っていたことを思い出す。

―「2001号室だから」。

行ってみよう。
京子は精算すると客室へと続くエレベーターへ急いだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ