‡REBORN‡

□殺人鬼〜飼育編〜
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「……!?ッ…ケホッ…ゲホッゲホッ」

予想どおりのことが起きてツナは激しく咳き込んだ。
口の中から零れた精液が床へと伝う。
それでも喉奧に絡みつくような感覚は消えずツナは苦しさに眉を寄せる。
しかし、そんなツナの様子はものともせず恭弥は襟首を掴んで無理やり顔をあげさせた。

「んっ」

「何こぼしてるわけ?」

不服そうに恭弥は言い僅かに覗くツナの胸元へとナイフを滑らせた。
浅く、だがしっかりと傷付けることができるように。

「痛っ……」

思わず悲鳴をあげてしまう。
傷口からは赤い血が滲み出してツナの羽織るシャツをじわじわと染めた。
ツナは泣きたくなったけれども堪える。
これくらいの痛みになら耐えてみせる。
すでに身体には小さな切り傷やかすり傷が同じような経緯でできていたから。
彼らはツナに“奉仕”を強い、少しでも不満があれば傷つけてくるのだった。

「へぇ、泣かないんだ」

物足りなさそうに恭弥は呟いた。
ツナのシャツを開くと滲んだ血に舌を這わせる。
ツナが不快感に身をよじると愉しそうに笑った。

「やめて……下さい」

ツナが言えばその傷口へと噛みついてきた。

「っ……帰して、オレを帰してよっ」

たまらず叫んだツナにいやだよ、とあっさり言って恭弥は愛撫を続けた。




あっという間に骸との交代の時間がやってきて、恭弥は不服ながら地下室をでた。

―綱吉。

どうやら自分は思っている以上に彼を気に入ってしまっているようだ。
自室に戻るのさえ気だるくて恭弥はダイニングのイスへと座った。
ふと自分が初めて人を殺したのはいつだったか、と記憶を手繰りたくなった。
幼い頃から人の苦しむ姿が好きだった。
他人などどうでも良かったから思うままに人を傷つけていたけれどもどこか足りなくて満たされなかった。
それから少し経てば彼女などというものもできるようになったがやはりどうでもよくて、素っ気なくし続ければ向こうから離れて行った。
そうして何人目かの彼女の時。
どうして、と泣いてすがられた。
あまりの鬱陶しさに幼少時のようになぐってしまった。
それなのに彼女は腫らした頬のまま私を愛してと縋ってきて愛せないなら殺してよとヒステリックに叫んできた。



気がついたら彼女を刺し殺していた。
女に煽られるままに殴りつけ切りつけ。
恭弥には後悔の念も彼女に対する想いもなくただ人生で初めての快感に酔いしれていた。



さて遺体をどうしようかと考える恭弥の元に突然兄の骸から電話がかかってきた。
平静を保ち話していたはずなのに何かありましたか、と見抜かれ、骸ならば仕方がない、と打ち明けた。
彼は面白そうですね、と笑った。
それが始まりだった。



最初はお互いの彼女で愉しむことにしていたのだが、いい加減彼女が消え続けたら怪しまれるだろう、と赤の他人を攫うことになった。
用意したこの家に連れ込んで、交互にいたぶるのだ。
大抵は一週間とたたず飽きがきたものだったがツナは見ていて飽きない。
苦しむ姿がどんな相手よりも楽しい。

―男なのに、ね。

それに彼は殺して欲しいと一度も乞わない。
あの女たちは皆狂ったように叫んだのに。
ツナはあの大きな目でこちらに訴えかけてくる。
そんな彼が恭弥は愉しくてならなかった。
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