‡REBORN‡
□正しい兄弟関係
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「お疲れだね」
ぽんぽんと軽く頭を叩かれた。
机の上にだらしなくのびていたオレは慌てて体を起こす。
顔をあげてみればそこにいたのは自分の同僚だった。
「白蘭」
オレがその名を呼ぶとやぁ、と笑った。
ギッと椅子を引いてオレの隣に座ってくる。
「そろそろ、授業なんじゃなかったっけ?」
「うん。だから今のうちに休んでおこうかな、って思ってさ」
ここは高校受験対策用の塾だから生徒は皆神経質になっている。
だから、彼らに一対一で教えなくてはならないこちらも緊張してしまうのだが次の生徒は格別だった。
といっても、彼はストレスのたまりがちな塾生の中、苛立ちをあらわすこともなく、また、先生をしなくてはならないこちらが困ってしまう程に頭も良くて成績も優秀だ。
だが。
「雲雀……雲雀恭弥君って言ったっけ?」
「え?」
「次の生徒の名前だって」
あぁ、とオレはほっとしそうになる。
不意打ちで名前なんか言われたからどうしようかと思った。
オレはそうだよ、と平静を繕いながら答える。
「期待されてる子らしいね。でもさ、なんかもう推薦決まってるみたいなのになんで来てるんだろう」
何気ない白蘭の一言。
さぁ?と適当に流したもののオレは内心非常に気まずかった。
彼がここにわざわざ来ているのは、おそらくオレのせいなのだ。
雲雀恭弥はオレの新しい弟だった。
オレの父さんは母さんとオレを残し随分と早くに死んでいた。
母さんはオレを女手一つで育ててくれ本当にお世話になった。
だから、オレは大学を卒業した今もせめて結婚するまでは母さんの手助けをしようとまだ家にいるのだ。
母さんはどんな男とも付き合う素振りを見せずオレが出てったら1人になってしまうと密かに懸念していたのだったが、そんな母さんがある日突然再婚すると言い出した。
オレには止める理由などなく快諾したのだったが、その男には二人の連れ子がいた。
オレがいたら気まずいだろ、と家を出ようとしたのに急ぐことないじゃない、と母さんに引き止められ、いよいよ彼らと対面することになった。
いつもは二人分しか使われない椅子がちゃんと埋まってることにオレは新鮮さを感じた。
オレの前には藍がかった髪に赤と青の目の男と黒髪黒眼の男が座っている。
あんまり似ていない。
似ていないといえば玄関先で初めて会った時の行動も全然違った。
初めまして、とにこりと笑んで見せた藍髪の男と軽い会釈だけで済ませた黒髪の男。
そんなことを考えていると
「ツッ君、こちらが骸君でこちらが恭弥君よ」
と母さんが言ってきた。
少し遅い紹介。
「えっと骸君が高校二年生で恭弥君が中学三年生だったかしら」
えぇ、と背の高い藍髪の方が頷く。
こっちが高校生だという骸君だろうか。
一応は社会人である自分だがこうしてオッドアイに見下ろされていると自分の方が年下のような気がしてくる。
もう一人の恭弥君の方にしろそうだ。
彼が中学生だなんて!!
「お兄様?」
オレが呆けているとなれない呼称が耳についた。
「は?」
と思わず問い返してしまう。
「いえ。僕の方が年下のようですからそうお呼びしようかと」
骸君はそう言った。
恭弥君は黙ったままだ。
あらあらと母さんは嬉しそうにオレ達を眺めているが冗談じゃない。
「綱吉でいいからっ!!」
思わず叫んでしまった初対面。
これ以上なく最悪な出だしだと思った。