‡REBORN‡
□愛玩人形
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体を清められ、新しい衣服を身に纏わされたツナは召使いに連れられディーノの部屋へとやってきた。
彼にとってみたこともないであろう華美な装飾に溢れたこの部屋。
ツナはぱちぱちとまばたきを繰り返して辺りを見回す。
着なれないシャツが気になるのかもぞもぞと身体を動かす様も可愛らしかった。
ディーノは微笑んだ。
予想以上だった。
ツナの“完成度”はディーノが望んでいた以上だったのだ。
―んじゃ、始めるとするか。
ディーノはツナに自分の座る椅子の方に来るように、と目線で指示する。
勿論、ツナは大人しく従った。
自分の前にやってきた彼に
「なぁ、ツナ」
とディーノは呼びかける。
「おまえは自分の立場、分かってんのか?」
ディーノは穏やかだった笑みを一転させ、冷めた表情に変える。
その変化に戸惑いを隠せないツナの様子に笑んでしまいそうになった。
「ツナは親からオレの親父に譲られたんだぜ?」
ツナは首を少し横に傾けたがコクリと頷いた。
「父さんにいっぱい金貨わたしてた」
多額の金貨と引き換えに捨てられたのだということをこの少年はどこまで理解しているのだろうかとディーノは思う。
「だからさ、ツナは今、ひとりぼっちなんだよ」
わかるよな、と残酷に事実を告げてやる。
「…ひと、り……?でも、ディーノさんが……オレのお兄さんになってくれる、……そうなんでしょう?」
不安そうに尋ねてくるツナをおいで、と呼び寄せてディーノは抱きしめた。
「そう。だけどな、もし、オレの言うことを聞かなかったりしたら……追い出しちゃうかもしれないな」
耳元で囁いてやる。
「や、だ……」
ツナはディーノの描くとおり、泣きそうになっていた。
ディーノは自分の望むとおりの行動をとってくれるツナが楽しくて仕方がなかった。
これなら、この先の“段階”も楽にいきそうだ、と思う。
「じゃあさ、ちゃんとオレの言うこと聞けよ?」
「はい」
それは何よりも重い制約だった。
自分の腕の中でうずくまり、幸せそうにうつらうつらとするツナにディーノは笑みを深くする。
この少年は何もしらない。
ディーノが何を思って“弟”だなんて言い出したのかもこれから自分がどう扱われるのかも。
―ツナ、おまえは知らないだろ?
この国にあるいくつもの厄介な法律を。
そのうちの一つには男色を禁じる、というものがある。
しかし、どういうわけだか貴族の、それも高位になればなるほど男に興味を持つものは多い。
ディーノはツナをそれらを攻略するための駒にするつもりだった。
誰かの人生を丸ごと狂わせてしまうことができるような遊戯。
ディーノはそれの主催者になるつもりだった。
ツナを弟として扱うと宣言したのはその布石に他ならない。
兄弟が一緒にいるのは自然なことだから、男色だと怪しまれることもないだろう、と。
いい退屈しのぎができそうだ、とディーノは思った。