‡REBORN‡

□人形のお披露目
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骸に挨拶をしている間、ディーノはツナをホールに置き去りにしていた。
ここから動くなよ、と言っておいたはずなのに戻ってきてみれば彼はいなかった。
ディーノは予想外の出来事に苛立ちを覚えた。
逃げ出したなんてことはないだろう、と思うがならばどこに行ったのだろう?
ディーノはとにかく会場内を歩き回ってみることにした。



ディーノを見ると様々な人間が寄ってきて話しかけようとして来たがそれどころではない。
適当にあしらってツナを探し続ける。
と、妙に招待客の集まっているところにでくわした。

―?

ディーノはそちらに歩いていき人垣の隙間から覗きこんでみた。

―ツナ!

叫びそうになった。
今すぐ彼の手を引いて抜け出したいようなそんな誘惑にさえかられた。

「でも、ディーノさんが」

ツナの声が聞こえてきてはっとした。
ツナは銀髪の若い男と話しているようだった。
ディーノは記憶を手繰って彼が某子爵の長子である男だということを思い出した。
隼人、と言ったか。

「別にいいじゃないっすか。あの野郎、今はいないみたいですし……オレのところでなら今以上の待遇を約束しますよ?」

銀髪はそこで言葉を区切った。
何をするかと思えばツナの両手をぎゅっと握りしめた。

「オレは本気です。あなた様を一目見て……惚れました」

なんでこんなにも人だかりができているのかディーノは分かった気がした。
基本的に人に対して常に警戒態勢にあるような隼人という男が、こんな風に人に接するところはめったに見れるものではない。
目が輝いているように見えるのは何もキャンドルのあたり具合のせいだけではないはずだ。
対するツナは困惑したような表情。
端からみれば彼は跳ねっ返りの貴族の坊やに口説かれる“少女”に見え、どおりで騒ぎにならなかったわけだ、と思った。
もしツナが少年だとしれたら夜会どころではなくなっただろう。
さて、ツナはどうするのかな、と見ていれば彼は顔を背けて何事か呟いた。
ディーノさん、とその唇が動くのが見える。
けれども、相手の方に気にする様子はなく、このまま強引に押されて連れて行かれてしまうかと誰もが思った。

「……ツナ、行くぞ」

見かねてディーノは声をかけた。
本当はもう少し、ツナが自分の名を縋るように呼ぶ様を見ていたかったけれども、隼人に連れて行かれてしまってはかなわないから。
そんなディーノの思惑には気がつかずただ、彼は自分を助けにきてくれたのだと思ったツナは

「ディーノさんっ!!」

と嬉しそうに叫んでディーノに駆け寄った。
ディーノはそんな単純さをいとおしく思った。
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