‡REBORN‡

□常識外
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「今日からこちらで働かさせて頂くことになりました、沢田ツナと申します」

ミルフィオーレ社の幹部たちの集まる中、物怖じせずに言ってその人間はペコリと頭を下げた。
華奢な首筋が露わになりその場にいた人間は思わず息を飲む。
が、そんなことには気がつきもせずツナはキョロキョロと辺りを見回した。

「あの……入江さんという方に会えば分かると言われたんですけどどちらに?」

幹部の一人としてその場にいた正一はその声に慌てて名乗り出る。
見とれている場合ではなかった。

「僕だよ。君が世話係に応募してきた子?」

「はい。今日ミルフィオーレ社に来るようにということでしたので」

言ってにこりと微笑む。
あまりにも純粋な笑顔に正一はただただ申し訳なく思うのだった。





ミルフィオーレ社の募集した世話係、とは社長、白蘭のものだった。
社長室の設備が整っているのをいいことに半分ここで生活を始めてしまった困った人なのだ。
特別部屋を汚すわけではないがとにかくルーズ。
少し目を離したらすぐに仕事をさぼる。
業績を下げない程度に、ではあるが彼さえ真面目にやってくれるのならばもっと伸びても良いはずなのだ。
さらには、女性にだらしない。
連れ込んではよろしくやっているから仕事上彼と接することの多い正一の胃はいつもキリキリ痛んでいた。
これ以上彼に関わっては自分の精神が駄目になる、と正一は他人にまかすことを思いついた。
それが世話係なのだった。いわばスケープゴートである。
白蘭は特に気にしないようだったが可愛い子にしてね、との条件は絶対だった。




正一は隣を歩くツナのことが気になって仕方がなかった。
年は19歳。夏休みの間だけだというから学生なのだろう。

「君は、どうして応募しようと思ったんだ?」

何気なく尋ねただけなのにツナはギク、としたように動きを止めた。
それと同時にスカートの端までもひらりとゆれるから思わず目で追ってしまいそうになった。

「……どういうことですか」

「いや、この仕事給金はいいかもしれないけど女の子にとって条件はよくないんじゃないかな、って思って」

19歳と言えばお年頃だ。
住み込みでお手伝いのようなことをしろといわれ
たら躊躇いやなんかもあるのではないだろうか。
それに、仕える相手は男だとも言ってある。
手が早い男だとまではさすがに言っていないが。

「えっと……早急にお金が必要なんです。夏休み明けまでに500万とちょっと」

今度動きが止まったのは正一のほうだった。
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