‡REBORN‡
□人形のお覚醒め
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曇り空の多いこの国にしては珍しくその日の空は青く澄み渡っていた。
部屋の中に漏れ入る陽光がディーノの金糸を煌めかせるその様にツナはぼぅっと見入る。
「どうした?ツナ」
ツナの視線に気が付くとディーノはおいで、と呼び寄せる。
ツナははい、と頷いて立ち上がると彼のもとにまで歩いていく。
示されるままにツナは彼の膝の上に座るとぴったりと上体をディーノにくっつけた。
―あったかい。
彼の温もりにほっとする。ディーノはちゃんと自分の側にいる、と。
幸せ。
たしかに幸せなはずなのにツナの中に何か不吉な予感めいたものが浮かんでくるのを打ち消すことができなかった。
平穏を崩すような転換。
去り際に骸が残した言葉が脳裏をよぎる。
―やだ。
ツナはますますディーノに強くしがみつくのだった。
お互いの存在を確かめ合うように寄り添って、ふと口付けを交わしあったりしながら時を過ごす。
昼頃になって召使いがやってきた。
食事の用意ができたとかそういうことかと思えばそうではないらしく妙に焦った様子だった。
「何だ?」
慌てるばかりで要領を得ない彼にディーノは苛立つ。
「国王陛下直属の調査団だとおっしゃられているのです、ディーノ様」
「国王?」
ディーノは眉を顰めた。
国王というとその親戚だという忌々しいあの男、骸を思い出してしまう。
それにしても、調査団とは随分と大袈裟なことだと思う。
ツナはよく分からないまま不安そうに彼らを見上げる。
「今、そいつらはどこにいるんだ?」
「下の客間に案内しておりますが……」
では今のうちに準備をしなくては、とディーノは思う。
ツナ、と隣にいる彼を呼ぼうとした時だった。
「遅いよ。あんまり待たせないでくれる」
第三者の声が場に響いた。
「!?」
ドアの側に控えていた召使いが制止しようとするのを、どいて、と鬱陶しそうに押しのけ、1人の男が部屋の中に入ってくる。
青年というにはまだ若く、しかし、十分すぎるほどの威圧感を持った少年。
高慢に室内を見渡し、ぴたとディーノの前で目を止めた。
「あなたがディーノ?」
「おまえが調査団なのか」
ほぼ同時に問いが紡がれる。
「そうだけど?僕はその男を捕らえに来た」
少年は傲慢ともいえるような態度で言い放った。
少年の他に人がやってくる様子はなく団、といいつつ彼1人のようだ。
ディーノの横でそのやりとりをぽかんと見ていたツナは男の容姿に夜を思い出した。
黒髪。それよりもなお暗い漆黒の瞳。
こちらに向けられる眼差しに押しつぶされてしまいそうだと思う。
身を包む衣服も黒を基調としたもので余計にそう感じさせられた。