‡REBORN‡

□人形のお覚醒め
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少年は我が物顔でソファーへと腰掛ける。

「あの」

ずっと黙っていたツナは口を開いた。

「捕らえるって……どういうことですか?」

男はつい、と視線をツナの方に向けた。
射竦めるようなそれにツナはこくんと息をのむ。
しかし、彼は意外にも

「君は?」

と問うてきただけだった。

「オレ?」

「もしかして、ディーノの相手?」

「?」

男の問いの意味がツナにはさっぱり分からなかった。
けれども、ディーノはその言葉で確信したようだった。
なるほどな、と呟く。

「骸に言われて来たんだろ?」

「さぁね。キャバッローネの侯爵は禁を犯しているって聞いたから来たんだよ」

君を捕らえにね、と男は唇を歪めた。
ツナは、はっ、とした。
おぼろげながら状況を理解する。
最後の骸の捨て台詞。
それが今の状況なのだ。

「証拠はあるのか?」

あくまでディーノは冷静に男に問い返す。
相手は大勢ならいざ知らずたった1人。
優れた能力を有していようともこちらは仮にも侯爵であるし、年も一回りは違う。それは即ち経験の差だ。
少年は首を傾げた。

「キャバッローネは切れ者だって聞いてたけどそうでもないのかな」

「…………」

「僕が捕らえるって言っているんだから大人しく認めてついてくればいい。僕の言葉は国王の意志と同じ。男色だけじゃなくて国家反逆罪にも問われたいの」

言いながら、男は苛立ったようにカツカツと机を叩いた。
とんでもなく一方的な言葉だったけれどこの男には確証があるのだ、とディーノは思う。
事実、それは真実以外の何物でもない。
それでも、認めるわけにはいかず足掻きとばかりに証拠はと問おうとする。
が、それを見越したよう男は口を開いた。

「言っておくけど証拠なんてそこにいるのを調べればいいだけだよ」

君を吐かせるよりもよっぽど手っ取り早そうだ、と男は言う。
ツナはディーノの方をちらりと見る。
僅かに諦めの色が見えるその目に、自分は信用されていないのか、と今更ながら気が付いた。
ツナがディーノとのことを洗いざらい吐き出してしまうとそう思っているのだろうか。

―ディーノさん……。

「ツナは、」

ディーノは口を開いて何事か喋ろうとした。
こいつは関係ない、とそんな言葉を紡ぐよう音無しで動かされたそれにツナは覚悟を決めた。

「おかしいですよ」

できるだけしっかりとした声で、挑戦的に言い放つ。男の視線はディーノからツナへと移る。

「おかしい?何が」

ツナの思惑に気が付いたのか、おい、と引き止めるようにディーノが呼んでくるが無視する。

「ディーノさんだけが捕まるなんておかしいです。オレも一緒じゃなくちゃ」

1人ではできないでしょう、とツナは言う。
何が、とは敢えて語らない。

「さぁ?君については何も触れられてないよ」

言ってさらに何か続けようとする男の言葉はクス、と笑ってツナは遮る。

「あなた、骸の思い通りになってもいいんですか?」

ディーノのことは彼の情報なのだと当たりをつけて言い放つ。
不快そうにしかめられた彼の顔を見るに正しかったようだ。
骸の思い通りという言葉が気に食わなかったらしい。
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