‡REBORN‡

□残酷遊戯
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とにかく退屈だった。
僕は何をするのにも飽きて窓に目をやった。
窓の外には木々が茂り、そのずっと奥に教会の十字架が見える。
あの下には街が広がっていて様々な人間が暮らしているらしい。
遠すぎて僕には見ることもできないけれど。
それは、ただ地理的な距離だけではなく僕と外界との距離そのままだった。



堅く高い壁。選りすぐりの衛兵。
彼らに守られた僕の世界。
あぁ。こんなところに一生いなくてはならないのか?
王宮、なんて仰々しい名前だけの虚ろな牢獄に。
そう思うとひどく苛立つ。
あまりにつまらない。
今もとても暇だけれどこんなのが一生続くのか。

「ねぇ」

僕は退屈しのぎに召使いに話かけてみた。
普段人の集まるところが嫌いだから、と食事すら食べにでてこない僕に話しかけられて彼女はとても驚いたようだった。
ぎこちない笑みで

「どうかなさいましたか?恭弥様」

と返答する。

「この城って壊すのにどれくらいかかるかな」

無駄に煌びやかなお飾りの建物をさ。
そうしたら、王家の名が貶められたとかなんとかで王政どころじゃなくなって破綻するんじゃないだろうか。
国王陛下は自分以外などどうでもいいと思っている割に今の地位を気に入っているみたいだから怒るかもしれない。
さて、彼女の返事はどうだろうと目をやる。
すると彼女はカタカタと震えだして首を振った。

「し、しりませんっ」

叫んだかと思うとそのまま外へと飛び出していってしまった。

―はぁ。

僕は溜め息をつかずにはいられなかった。
飲み終わったグラスくらい下げて欲しかったな。
それにしても、なんてレベルの低い反応なのだろう。
まぁ、草食動物がまともに僕の戯れに答えるというのも想像がつかないけど。
それにしたって退屈しのぎにさえならなかった。
どうしてこうも人間はありふれているのだろう。
何か、僕の想像を超えるようなことが起こってはくれないだろうか。
このままだと退屈すぎて死にそうだと真面目に思った。







あれからあの女は戻ってこなかった。
僕はこの前図書室で見つけた本を読んでいた。
なかなかに面白そうだと思ったのだが期待はずれだった。
ただ文字をおい、ページをめくる。
コンコンとドアをノックする音がして僕は何、と短く問う。
開かれたドアの向こうに立っていたのは先ほどとは異なる召使いだった。
深々と一礼すると

「恭弥様、国王陛下がお呼びです」

と言う。
あの兄が?

「ふぅん。珍しいね」

僕は本を脇に置いて立ち上がった。
僕の想定外のできごとだ。

「どこ?」

「蓮の庭、と言えばわかるだろうと」

「そう」

僕は薄く笑って頷いた。
あの兄は僕に何を用意してくれているのだろう?
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