‡REBORN‡

□贖罪
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開かれた奥はぼんやりと灯りが点り、薄明るかった。

――!?

綱吉は踏み入れようとした足をはた、と止める。
“人影”が見えたからだ。
頭数、ざっとみて10はある。
こんな辺鄙な場所にいるなんて、待ち合わせをした彼らと見てまず間違いはないだろう。
不釣り合いな洒落た机と椅子が並んでおり、ボスと思しき男の正面だけがぽっかりと空いていた。

「お待ちしておりました、ドン・ボンゴレ」

男の口が開かれる。
ただそれだけのことなのに、綱吉はぞくりとせずにはいられなかった。
黙っている綱吉に男は再度話しかけてくる。

「“イエナ”と呼ばれる我々と話をするためなどに、高貴なる血をお引きになるボスがいらして下さるだろうか、と不安になっていたところですよ」

相手方のボスの言葉に嘲笑とも自嘲ともとれる笑い声が周りから漏れた。
感じが悪い。
綱吉は眉を顰めた。
それは彼らの嘲りの為だけではなかった。
自分は人の気配は一切ないと認識した筈なのに、こうして目の前に彼らは存在している。
しかも、対面している今でさえも生気というものを彼らから感じることができないのだ。
わけの分からない状況において綱吉は困惑していた。
そんな綱吉の様子に気が付いたか気が付きもしないのか、まるで気にせず男は綱吉に微笑んだ。

「どうぞ、ボンゴレお座りになって下さい」

席を勧められる。
そうしているその動作さえも不自然に思えてしまう。
無理やりに声帯を震わされて言葉を紡がされているような気がしてしまうのは、はたして気のせいで済ませていいのだろうか。
綱吉は動き出せないでいた。
足は扉から数歩歩んだところで止まっている。

「どうかされましたか?」

「こんな汚れた場所で話し合いなどできない、と?」

投げかけられる言葉。
付け入らせる隙を与えてはいけない、と綱吉は焦る。
それこそが隙になってしまったのかもしれない。

「あまりつれなくしないで下さいよ」

唐突に背後から囁かれてとっさに反応ができなかった。

――他にも、いたのか?

その声に綱吉は肌が粟立つのを感じた。
ただ、それは先ほどの不調和のもたらす不快感とは違った。
誘惑された時に近い。
それに酔いそうになる前に理性が綱吉を現実に引き戻した。

――何だ?

後ろの男は何者なのだろう。
よく知った声であるような気がしたけれど、平常心とは程遠くなりつつある綱吉はまともに考えることができなかった。
先程まで――少なくとも綱吉がこの部屋に入った時――はいなかった筈なのに、物音一つ立てずに近寄ってくるなんて相当鍛錬を積んだものだと知れる。
振り返って確かめようとした瞬間。
一瞬の間にす、と後ろから抱きすくめられ、鳩尾に拳を叩き込まれていた。
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