‡REBORN‡

□「神」
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「嘘つき」

言わずにはいられなかった。
父と母の崇拝……狂信するあの男は神の御子なんかじゃない。
ただのペテン師だ。
子供だましの幻術で不思議なことをやってのけるだけのただの道化。
皆が、骸様、骸様、と熱に浮かされたようにその名を呼び崇め奉る中で、オレだけがその事実に気が付いてしまっていた。





視察を終え自分の“城”へと戻ろうとする彼をオレは呼び止めた。
彼は優雅に長い藍髪を揺らして振り返り、その双色の目を細めた。
“神の御子”に相応しく穏やかに微笑しながら、なんでしょう?と問うてくる。
大方、信者に連れられて“入村”した哀れな子供がたわいない言葉を話しかけてきたのだとでも思ったのだろう。
オレの周りにも家族に連れられて村に入ったきりになってしまった人は沢山いる。
目の前の男に騙されて信者にされてしまうのだ。
それらを知るオレでさえ、今、彼の浮かべている笑みには騙されてしまいそうだった。
オレはぎゅっと爪が食い込むほどに拳を握り、くだらない思いを頭から追い出した。

「あなたは……嘘つきだ」

絞り出すように言葉を吐き出す。
喉元を通るその音は粘膜を爛れさせるかのようだった。
しかも、それだけでは終わらなかった。
焼けるような喉とは対照に空気がいきなり冷えたような気がした。
ほぅ、と呟いて彼はオレに近付いてくる。

「それは……面白い冗談ですね」

彼はもっと唇を吊り上げる。
穏やかな微笑みは跡形もなく、彼が神聖な存在ではないことを示すかのようにその笑みは歪んでいた。
その笑顔に身の危険を感じた。
オレは知らず、一歩、また一歩と後退していた。

――怖い。

これが恐怖というものなのだ。
オレはがくがくと震える足を無理やりに動かし続ける。
男を崇めるために建てられた礼拝堂にはオレの不規則な息遣いと近付いてくる彼の足音だけが響く。
助けてくれそうな人はいない。
オレが二人きりになるのを待ってから彼に話しかけたから。

「どうしたんですか?顔、真っ青ですよ」

クスと嗤って彼はあっという間に距離を詰めてくる。
もう手を伸ばされたら届いてしまうような間しかオレ達の間には残っていなかった。

「こない、で……」

オレは首を振る。
彼の歪んだ笑みの意味をオレは間近で目が合った瞬間ようやく悟った。
彼は怒っているのだ。
彼が恐ろしいのに、その目から目を離せなくなった。
どん。
鈍い音がした。

「……っ……」

オレは訳の分からないまま、その衝撃に耐えきれず床に倒れた。
鳩尾が熱くて、彼に蹴られたのだ、と理解した。
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