‡REBORN‡

□躾
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「沢田綱吉」

冷めた声で教師はその名を呼んだ。
ただでさえ廊下から少しずつ流れ込んでくる風が冷たいというのにさらに室温が下がりそうだ。
異変を感じ取ったのかまどろみの中をさまよっていた綱吉はぼんやりと目を開いていった。
骸と目が合うと、は、としたようにその目を大きく見開く。

「ごめんなさい……」

震えた声で紡がれる謝罪。
それを見ながら、あぁ、またか。と雲雀は思った。

「何度目ですか?謝ったところで少しも反省が見られない」

骸はいいながらカツカツと教卓を指で叩いて鳴らす。
その唇の端が愉しくてたまらないというように吊り上がっていることに雲雀は気が付いていた。
いつもそうだ。
この教師は沢田綱吉を罵り虐げる時、ひどく嗜虐的な微笑みを浮かべるのだ。
毎回のように席をたたされ、ねちねちと説教をされているというのに、懲りずに授業中眠ってしまう綱吉も綱吉だと思う。
といっても雲雀は彼がその度に涙で目を潤ませるのを見るのは嫌いではなかった。
あの教師が愉悦に浸るのを見るのは嫌いだったが。

「前に来なさい」

骸の言葉にびくり、と綱吉は身を竦めた。
早くも泣き出しそうな顔になりながらも気丈に頷き、綱吉は立ち上がった。
静まり返った教室にギィッという椅子のひかれる音と彼の靴のたてるペタペタという音だけが響く。
いったい何が行われるのかと皆は固唾を飲んで見守っていた。
かくいう雲雀もその一人だった。
教壇の前に辿り着いた綱吉に、骸はただ一言。手を出しなさい、と命じた。

「手を、ですか?」

「早く」

静かながら威圧するような響きを持った骸の声に気圧されたように綱吉は手を差し出した。
包み込めてしまえそうな小さなその手も、その手の先を飾る薄桃色の爪も、柔らかそうなその皮膚も何もかもが可愛らしかった。
骸はこれから自分がすることを思うだけでたまらなくゾクゾクとした。

「手を伏せて机に」

「はい」

生徒は 教師に逆らうことを許されない。
何をされるのかと怖くてたまらなくても従うしかないのだ。
綱吉は両手の甲を上に向けて、教壇に並べた。
刹那。
パシン!!という乾いた音が教室に鳴り響いた。
何をされたのかが一瞬よく分からず呆ける綱吉の手につっと血が滲んだ。
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