‡REBORN‡

□奈落
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「ねぇ、骸……?」

耐えきれなくなったように綱吉は僕を呼ぶ。
苦しそうに潤んだ目で救いを求めるように見上げてくる。
やめろ。そんな風にするな。
勘違いしてしまいそうになる自分が疎ましかった。
彼はどこまで僕を捕らえれば満足するのだろうか?
もう僕は彼のことしか考えることができないというのに。

「薬ならここにありますが」

僕は自分の傍にある棚をあけると、中から白い錠剤の瓶詰めを取り出した。
僕はどうしようもなく狡い人間なのだ。
彼を手に入れる為ならばこんなものまでも使ってしまう。
半径1センチメートルほどのその白い錠剤はどことなく甘い腐臭がする気がする。
それはきっと僕の爛れきった記憶と密に結びついているからだろう。

――ちょうだい、骸。

懇願する彼の囁きが甦る。今まさに囁きかけられているかのように鮮明に。
彼は言って僕に手を伸ばすのだ。小さくて可愛らしい手を。
その切実な響きを持った囁きは、まるで僕を求めているかのように聴こえるのだった。
僕はその錯覚を味わうために飽きもせず“この行為”を続けてしまうのだ。
あぁ。なんとも哀れで惨めで……、そして、どうしようもなく醜い。
分かっている。分かってはいるけれど、彼が僕に与えてくれるものはそれらが些細なことにしか思えなくなるような甘美なものなのだ。

「ほしい……。ほしい、よ。骸……」

彼は泣きそうな声で言って僕に手を伸ばす。僕の中の甘やかな記憶をなぞるように。
立ち上がる気力すら最早ないであろうに腰掛けた寝台から僕の方に少しでも近付こうと必死に足掻く。
それは僕以上に惨めで、あさましくて、けれど、恍惚としてしまいそうなくらいに美しかった。

「これを?」

分かってはいるけれど、瓶を揺らしてかちゃと音を立ててみる。
こくん。彼は頷いた。
それは従順でひどく可愛らしかったが、一方でどこかその様に苛立ちを覚えもするのだ。
けれど、僕にもこれ以上彼をじらすのは流石に可哀想だという思いはあって。

「では、脱いで下さい」

と苛とする思いは抑え、できるだけ優しく囁いてやった。
うん、と綱吉はためらいなくズボンを下ろし始め、下着さえも脱ぎ、僕の前にその肢体を晒した。
もう何度目なのかも分からないほどに繰り返された行為な筈なのに、未だ見慣れることはなくて、その度に綱吉の肢体の白さと背徳感とに息を飲んでしまうのだった。
そして、堪えることもできずに畜生のように盛りたくなるのだった。
それは、今この時もやはり同様であった。
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