‡REBORN‡

□Addiction
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窓の外は既に白み始めていた。

「おや、もう起きてしまいましたか」

残念そうな声がすぐ傍で響いて、綱吉は緩慢に振り返る。油断をするとまだ、微睡みの中に引きずり込まれてしまいそうだ。
柔らかに笑んで、骸はこちらを見ていた。
日は眩しいし、横からこそばゆくなるような熱烈な視線を浴びせられたら、嫌でも目が覚める。ついさっき、ようやく寝かせて貰えたところだったのに。
骸は朝が弱く、寝台を出るのはいつも、日が昇りきった後だ。けれど、目を覚ますのは早くて、いつも眠っている綱吉を眺めている。
骸は綱吉を綺麗だ綺麗だと言う。それを厭だとまでは思わないが、やはり恥ずかしいと感じる綱吉の為に、寝ている間に堪能するらしい。綱吉は朧げにそれを感じながら眠り続ける。勿論十分恥ずかしいのだけど、それくらいは許してやらなくては起きている時に何されるか分からない。
しかし、それは綱吉にとって日常であって、珍しいことでは無かった。眠れない本当の理由は自分がよく分かっている。

「……やっぱ、駄目だなぁ」

気になってしまって仕方がない。

「何か不安なことでも?」

「…………別に……そうじゃないけど」

綱吉は知らず、骸から目を逸らしてしまっていて、それを咎めるよう骸の指先は綱吉の頬に触れ彼の方を向かせた。

「君が僕に隠したがること……あの国王の消息について?」

僅かな反応も見逃すまいとするように、骸は見つめてくる。真摯で、そして、いつもとは違って鋭利で、視線だけで抉られてしまいそうだ。

「別に、恭弥様は……恋人とかじゃないよ」

恭弥絡みのこととなると骸は機嫌が悪くなる。勿論、以前の隣国の支配者だということもあるのだろうが、彼は恭弥に嫉妬していると明言していた。
しかし、恭弥は当時、僅か十歳。今は生きていれば十六になる筈だ。生きていれば。厭な仮定。綱吉は嘆息したくなる。それにしても、臣下として彼を敬う感情を抱けど、愛弟を思うように愛しく感じれど、骸が恐らく危惧しているような想いでは、まるで無いのに。

「それは分かっていますが……では、君の恋人は?」

「え?」

「君の恋人は誰ですか?」

骸は悪戯っぽく笑みを浮かべて、綱吉を見ている。そこで、ようやく彼が望む言葉が分かった。それは綱吉の中に在る答えと同じだったけれど、改めて口にしようとすれば羞恥が生まれる。
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