05/28の日記
21:42
隣席ライフ2
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唇を寄せられる。
もう触れ合ってしまいそうで、でも、おれは目を閉じられないでいた。雰囲気が格好良いだけでなくて、本当に整った顔をなさってる。自ら視界を塞ぐなんて勿体なさ過ぎる。
ぼぅっと見つめていたら、先輩に微笑まれた。
「怖がらないんだ」
え、何を? むしろイケメン御馳走です。間近で堪能させて頂けて幸せです。おれは困ってしまって、曖昧に笑んだ。
「泣いてる顔って可愛くて好きだけど……」
そういう顔も可愛いな。先輩の囁く声は直接脳に響くみたいで、おれはほとんど何も考えられなくなっていた。
くい、と先輩の制服の袖を引っ張る。どうしよう。とても、キスしたい。絶対先輩のキスとか気持ち良い。
先輩は、ふ、と息を吐いて笑った。
唇が触れ合う。どんな期待をしていたのだったか。そんな考えは飛んでしまう。香水の匂い、柔らかい感触。
唇を割るようにして、舌を差し込まれる。そうしながら、先輩の手はおれの下肢を這い、ベルトを外しにかかる。
何が行われるのかをはっきりと考えられる程、理性は無かった。ただ、きっと悦くして貰えるという期待が有った。
硝子の割れる凄まじい音。
それがおれを現実に引きずり戻した。
鍵のかかっていたらしい教室の扉は無惨にも蹴破られ、外れた扉に先輩の取り巻きの男子二人が下敷きになっていた。周囲には嵌め込まれていた硝子が散乱している。そして、誰かの眼鏡も落ちている。おれは相変わらず先輩に押し倒されたまま。
部屋内にはいつのまにか見知らぬ美少年がいた。
怜悧な雰囲気はまさしく“美少年”と呼ぶに相応しい。目が合うと比喩なんかでなくて殺されてしまいそうな醒めた眼差し。おれは目の前にいる先輩のことも忘れて魅入る。
多分、この美少年が扉を破壊した本人だ。衝撃で乱れた髪が気に喰わないらしく、おれ達の方に歩きながら、手櫛で整えている。
「何なの、君?」
先輩は不機嫌そうにおれから身体を離して美少年に向き直る。
「イイところなの、分かるだろ。邪魔すんなよ」
美少年は実に品良く眉を顰めた。
次の瞬間には先輩は少し離れた床にまで吹っ飛んでいた。美少年の脚を戻す仕種で、彼が蹴った為なのだと分かった。先輩は呻きもせず、倒れたままだ。
この美少年、非常に機嫌が悪いらしい。せっかくこんな綺麗な人と会えたのに、意識飛ばさなくてはいけないのかな。
……痛いのは嫌だな。
「イイところだから、邪魔したんだよ」
低く響く声は期待の斜め上をいく美声だった。苛立ちも顕わな響きが、また、格好良い。
「おい、ツナ」
美少年に胸倉を掴まれ、引き起こされた。
「てめえもてめえだよ! 少し目ェ離した隙に、ほいほい連れてかれやがって。普段俺がどんだけおまえを気遣ってやってると思ってんだよ。こんな野郎に着いてったら、どうなるかくらい分かってんだろ!」
一息に怒鳴られる。あんまりにもびっくりして、ぱちぱちと目を瞬かせてしまった。
美少年に似つかわしくない激情。
ツナ、とおれの名前を呼んだこと。
こんな知り合い、いただろうか。例え擦れ違っただけだとしても、忘れないと思う。超絶美形。他は上手く撫で付けたのに、もみあげだけくるんと巻いているところすら美形。
「……悪い」
黙ったままのおれをどう解釈したのか、美少年はす、と手を離した。
「いえ、あの……あなたは? えっと、誰だか分からなくて……」
助けてくれてありがとうございます。と言うのは流石に先輩に申し訳ないような気がした。いや、その方が美少年とお近づきになれるなら……。
「分かんねえのか?」
美少年は少し可笑しそうに言った。人を小馬鹿にした調子なのは癖なのだろうか。嫌だとは思わなかったけれど。
「……ごめんなさい」
「いっつも、隣ん席で授業受けてんだろ」
?
おれの席は窓際。隣には根暗系眼鏡男子、ただし性格はよさ気なリボーンしか……。
おれの視界に床に落ちた眼鏡が映る。不良達は眼鏡なんか掛けてなかった。仮に美少年が眼鏡をしていたとして、髪も整えていなかったとして。
「リボーン……?」
いつも教室でリボーンは喋らないから、知らない声だったとしても不思議では無い。いや、しかし。
続く
お久しぶりです><;
リボーン様が傍若無人過ぎて楽しいです。
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