雲雀短編

□手を伸ばせばすぐそこに
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彼の視界から逃げ出そうとしていた頭が、
いつの間にか後頭部へと回されていた手に行くてを阻まれた上に、
グイと引き寄せられて僅かな抵抗が水の泡となってしまった。


だからこの近距離は心臓に悪い。

十分な間隔を置かずに連打するみたいに打つ心音は、
私に呼吸することを忘れさせる。

吸い込まれるような瞳に迫られれば、
まばたきすることを忘れてしまう。


望んではいけないことを、
望んでしまう。


有らぬ期待に、
胸がはちきれそうになる。

そしてそれを裏切られればまた、

どうしようもなく、

寂しくなる。


意地悪く持て囃して、
これ以上、

焦がれさせないでよ。


苦しいだけなんだから。




フッと、
長い睫毛が瞼に触れて、
反射的に瞳を閉じた。

目が回るような景色が、
一転して真っ暗になって、

耳をくすぐったのは、

春風の吹き抜ける音と、
桜の木がそれにざわざわと揺さぶられて花びらを散らす音、

それから、

私の唇に吐息を吹きかけながら呟く、

愛しい人の甘い声。







「─……こうすればまた見えなくなるから、
ずっとこうしていてよ」

「………へ……?」



わけの分からない台詞のおかげで、
間抜けな声を漏らすしか出来ない口に温かな何かが触れた。


それが何なのかってことに気がついたのは、
うっすらと誘われるように持ち上がった瞼の隙間から、
ぼやけて最早認識不可能ではあったけど、
間違うわけがない彼の黒髪と真っ白な肌が私の視界の全てを埋め尽くしていたから。



だから、

そういう不意打ちはずるいと思う。

心の準備なんて全然できてなかったし、
こんなの、
いきなり過ぎてどうしていいのかわからない。


また瞳を閉じればいいのかも、
呼吸をどうすればいいのかも、
やり場もなくてバタつかせるしかできない腕も、

嬉し過ぎる気持ちの置き場所も。







「……君はただ、じっとしてればいい…
僕が、こうしたいだけだから」



僅かに開いた唇と唇の隙間で、
私の心の中を読んだみたいなあなたが囁く。


いつだって、
あなたは何でもお見通し。

きっと、
私のこの寂しさも、
不満も、
全部全部、

知っていたんだろうと思う。


あなた相手に、
偽りの気持ちなんて通用しない。

だからこそ、
今ここにあるのは、

あなたと私の、

本当の気持ちだけ。






結局、
見せたくなくて足掻いた涙は、
嬉しさに緩む頬の上を滑り落ちてった。


一緒にいるだけで、
同じ時間を過ごすだけで満足できるわけがない。

満たされるわけがないんだ。


そのままでいいなんて自己暗示は、
たった一回の口付けで、
枷をはずされ、
解けてしまったみたい。



何度も何度も、
角度を変えてただひたすらに唇をぶつけるあなたの背中に誘われるように腕を回すと、


降りしきる桜の花びらが、

まるで祝福しているみたいに舞い上がって、
舞い降りて、


あなたと私、
重なってできた影に、
ピンク色の水玉模様を散りばめた。










ずっと、
こうしてみたいと思ってた





END



なんだか書いてて自分でもわけわかんなくなってきちゃったんですけどUPしちゃったっていう(苦笑)
スミマセンorz
なんだかね、
あの雲雀さんオンリーのスティックポスターの中の眼鏡恭さん見た時から書こうと思ってたんですけど書いてみたら収集つかなくなってきちゃいまして…>_<…まぁ結局あんまし眼鏡関係ないんですけど(笑)
んでも、
多分視力なんて悪いわけがない彼は(笑)、
こんな風になるきっかけにしてたっていうか…なんていうか彼なりの遠回しな愛情表現の一部分的なそれ(´Д`)(どれ?(笑))
気引きたくてこんなことしてるのになかなか気付いてもらえなくてモヤモヤしながら実は本読む余裕なんかもなかったりとか(笑)
……………そんな恭さんやっぱりちょっと嫌かも(´Д`(笑))

何はともあれ、
いつもながら変テコなお話に、
お付き合いありがとうございましたぁm(__)m
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