雲雀短編

□それはたまらなく長い時間
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あれから数日、
何故だか幼くなっていた沢田君達と、
草壁さんは帰って来たけれど、


彼はまだ、帰って来ない。




あのままなだれ込むように、
日が沈んで月に地上を照らす役割をバトンタッチするまで愛し合って、
落ちるように眠りに付いて目が覚めた時にはもう、
彼の姿はどこにもなかった。
いつの間にか引かれていた布団の上にあった私の体には、
器用に彼の真っ黒な着流しが着せられてあった。
意識が覚醒するのと同時に彼の匂いがして、
もう出掛けて行ってしまったんだと頭が働くのには少しだけ時間が要って、
私はまた、泣いてしまった。




地下に作られたこのお屋敷からは、
当然、
空は見えない。
だけど昔から空を眺めるのが好きだったと言う彼は、
そこにはあるはずのない空を作った。
部屋の入り口の並行線上にある障子を開けると広い中庭があって、
見上げると一面に空が広がっている。
地上にあるそれをホログラムで映し出した作り物の空だ。
けど、
それは本物と見紛うほどに綺麗で鮮明。

毎日、
彼と寄り添って、
その空を見上げながらつまらない話をするのが好きだった。
新しくできたケーキ屋さんの話をしたのもここ。
苺とカスタードクリームが大好きだと話したのもここ。
彼はいつも黙って私の話を聞いて、
小さく笑っていた。


今日もまた、
私は彼の着流しを羽織って、
彼の好きな空を見上げる。
一人ぼっちで。

月が綺麗だ。

ゆっくりと流れる雲が、
ゆっくりと登る月を追い抜いていく。

止まってしまったみたいに長く感じられる時間が確かに流れているのだと、
私はそれを見て実感する。


彼はまだ、

帰って来ない。




「…おばぁちゃんになっちゃいそうだよ……」




ポタリとまた、
涙が零れて、
呟いた言葉が真っ黒な空に溶けてった。





あなたを待つだけの時間は、
どうしようも無く長くて、

まるで1分をカウントするのに1時間もかかっているみたいで、

私は時計を見ることを止めた。












君のために帰るから、
もう少しだけ、
待っていてね。





END


何にも知らない彼女への夜襲前のプロポーズとその後、
みたいなお話でした(´Д`)

いつもとちょっと違う感じで書いてみたんですけど、
こんな感じの文章の方がスラスラ書けると新発見(ρ°∩°グズグズだけどね(笑))
んでも林檎バイトの合間見てダッシュでポチポチしてたからか、
いつもよか更になんだかぐちゃぐちゃのグダグダんなっちゃいました(笑)
誤字も多いかもですね(;´Д`)
けどちょっと続きも書いてみたいななんて…続き書いたりするの苦手なくせにそんな無謀なことも考えたりしています(´Д`多分無理(笑))

なにはともあれ、
お付き合いありがとうございましたぁ(≧∇≦)!!
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