雲雀短編

□退屈と、非平凡
1ページ/4ページ




授業開始のチャイムが鳴って、
規律に従う人達がみんな教室に押し込められて静まり返った校内は、
やたらと広く感じるものだと初めて知った。


変わり映えしない毎日が退屈だと感じるようになったのはもうずっとずっと前のことだけど、

こうやって授業をサボるのは生まれて初めてだったから。



幸い今日は朝から晴天。


普段から人気の無い屋上は、
一段と静かで穏やかな空気に覆われていて、
そこへと続く分厚い扉を開け放った時には、
まるで別世界に紛れ込んできたみたいな錯覚すら覚えた。


吹き抜ける暖かな風が髪の毛をさらっていくのを疎ましく思いながら、
口に含んだ大好きなさくらんぼ味のキャンディでほっぺたを膨らます。


ゆっくりと歩み出て屋上と空を隔てるフェンスに寄りかかると、
燦々と降り注ぐ日差しに照らされて熱く熱を帯びていたそれに、
思わず手を引っ込めた。



手持ち無沙汰になった両手を後ろ手に組んで、
ただそこへ立ち尽くして学校という名の狭い世界を見下ろせば、
窓辺の席に座る生徒が何人か居眠りしてるのが見えた。

隣人との会話に華を咲かせてる人もいれば、
雑誌を広げてる人もいた。

そんなのを見てみぬ振りをして淡々と授業を進める教師。


決め付けられた世界で、
決め付けられた時間を過ごすなんて、

退屈なことこの上無いのに。



どうして全ての行動を決め付けられて、

全てを制限される中にいて、


どうしてみんなは、

平気なのかな?


どうして私だけが、

平気でいられないのかな?





途方もないことを考えながら、
まだ見ぬ非平凡に思いをはせて欠伸を交えた背伸びをすると、





「ねぇ、君」





そんな私の淡々とした世界を大きく突き動かして、


打ち砕いてくれる低い声が、





静かに空から降って来た。






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ