*他愛ない君との時間*

□volume:3
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「雲雀さん、逆チョコって知ってます?」


「さぁ、なにそれ」


「バレンタインに男の子が好きな女の子にチョコをあげることですよ!
今流行ってるってテレビでやってました♪」


「ふーん、
間抜けな群れがやりそうなくだらないイベントだね」


「……………」


「……何?その期待に満ちた瞳」


「へ……いや…別に期待なんて……」


「僕からチョコレートを貰おうなんて随分厚かましいことを考えるね」


「…………………ですよねιスミマセンι」


「……で、君は僕にくれないのかい?」


「…………どっちが厚かましいんだか…ι」


「何か言った?」


「い、いえ!なんでもないです!
…実は…ちゃんとチョコ作ってきたんですけど……」


「じゃあさっさとよこしなよ」


「いや…それが…あんまり上手く出来なくて……」


「初めから期待なんかしてないから構わないよ」


「……なんだか有り難いんだか嫌な感じなんだか微妙ですけど…ιじゃあ…どーぞ……」


「……………………なにこれ、食べられるの?」


「た、食べれるに決まってるじゃないですか!!
見た目は悪いですけどこれでも頑張ったんですから!」


「……どう頑張ればこんなに汚く作れるのか逆に不思議だけど、
せっかくだからいただくよ」


「……………どう…ですか?」


「……まずくはないけど、
別に美味しくもないね」


「雲雀さん素直過ぎですιこういう場合お世辞でも美味しいよって言いますよ普通…」


「僕は嘘が嫌いだからね、
美味しくもない物に美味しいなんて言えないよ」


「まぁ…そうですよね……来年また頑張ります…」


「いや、
もういらないよ」


「……え゛…ιそんなに美味しくなかったんですか…?」


「君の腕前は良く分かったからね、
毎年こんなの食べたくもないし、
しょうがないから来年からは僕があげるよ」


「え、逆チョコですかぁ♪」


「その代わり……」


「へ………?」


「お礼は100倍返しで貰うけど、いい?」


「ひ…100倍?……ってどういう意味ですか…?」


「こういうのがいいってこと」


「わわっ!!ちょちょっと雲雀さん、隣りの部屋には哲さんもいるんですよ!?」


「いいじゃない、哲だって馬鹿じゃないんだから気ぐらい遣うさ」


「や…そういう問題じゃι……それに私お礼以前に今年はチョコもらってないですし……」


「今日のこれは、あんなチョコでも食べてあげた優しい僕へのお礼だよ」


「…………やっぱり厚かましいのは雲雀さんなんじゃ……ι」


「文句でもあるの?」


「………ありませんι」








不恰好なチョコレート、
本当は何より、
美味しかったよ






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