読物

□類い希なる少年
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パシャン−−--

パシャン−−−--



『赤く 赤く 染められた 月を 見てごらん』



歌声が…


『風が 吹き抜けるよ』

『風が すべてを 拐って 行くよ』


聴こえる……


『黒く 黒く 染めましょう』



悲しい…


悲しい歌声が聴こえるよ…


『キエナイよ ケセもしないよ』

『黒い 黒い 赤』

『暁の上 光る 月は まだ 赤いの?』


あ…か…?



『唄いましょう 唄いましょう あなたが 気付くまで』

『唄いましょう 唄いましょう 終わりが来る日まで』

『流れた 赤 広がるよ 黒は 赤だよ』



く…ろ…?


『星の彼方で 待ちましょう』

『赤を 贄に 黒を 取り戻しましょう』


唄が…止まない


『永遠を 与えましょう 永遠の その先は 赤か 黒か』

『私は 唄い続けましょう 永遠のその先まで』



そう…永遠に続くような…


『歌声に 乗せましょう 真実を……‥‥』


「しん…じ‥つ?」



頭が痛い。


身体中も痛いけれど、何よりも頭が割れるように痛い。


波の音…?がする。


…違う。波じゃない。何かが水面を打つような……。


恐る恐る目を開ける。


淡く蒼光りした洞窟の様なところにいる。


こんなところに来た覚えはない。


ましてや血のような鉄くさい匂いがする理由なんて思い当たらない。


血の匂い…?


誰の血?



「あら、目が覚めた?」

鈴の鳴るような声。


誰?


ケホッ‥ケホッ‥

ゴパッ −−--


え‥?


声を出そうとしたら代わりに血が出た。


「あぁ、やっぱり婆様の丸薬でも治らないかぁ。」


語尾をすぼめながら綺麗な顔を残念そうに歪める少女


いまいち言っている意味が解らない。


「悠理。お前、まだ死にたくないだろう?」


突然開き直ったように訳の解らないことを言う。

ん?死ぬって、悠理って誰だ?
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