Pot aux Roses...

□† 秘密 †
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前国王の双子の弟デュカス大公を父に持つシルベーヌは、シャルルの従姉でありルマより格の高い大公女となるのだが、色々な大人の事情でかなり野性的に育ってしまった。おかげでランディはいつも口撃でやり込められ、グーでボコにされ、ついでにアゴで使われるというような子供時代を過ごす羽目になったのだ。
そんなランディにシルベーヌが男か女かなんて関係ない。士官学校では男女別学で宿舎も別棟だと知り、シルベーヌが女子であった奇跡(?)に心底感謝したものである。

さて、そんなシルベーヌの恋のお相手デヴィッド。こちらもランディとは生まれつきの親友だ。両親がこれまた複雑な事情を抱えており、デヴィッドは2歳で母親の生家ヴェルデ伯爵家を継いでいるが、育てられていたのは父親の屋敷。それがランディの実家のお隣りだった。隣と言っても北海道かアメリカの農場主宅の如く歩いて行きたくないような距離であるけれど、敷地が接している事には違いはない。
そんなご縁で二人の誕生以前から何かと往来はあったようだ。
ランディは2歳で母親と死別しているが、その際に父親リフェールは不憫な一人息子の為にと庭に『St.ジョゼフ』という幼稚園を創設し近隣から無節操に子供達を集めたから、デヴィッドがヴェルデ家に戻った後も順調に付き合いは継続していった。

この幼稚園にシルベーヌもシャルルも通っていたので、シルベーヌがランディの幼なじみなら、デヴィッドにとってもシルベーヌは幼なじみなのだった。ついでに言うとシルベーヌこそがデヴィッドの初恋だと、今年になってから判明した

そもそもデヴィッドという奴は、滅多にお目にかかれないレベルの、正統派の色男なのだ。バンバンにフェロモンを漂わせていて『モテる』なんてモンじゃない。デヴィッド自身も女のコが大好きで、毎晩のデートは当たり前。相手は日替わり週替わりで常に300%オーバーブッキング状態。デヴィッド一人では賄い切れずに周囲の友人知人が協力しなければいけない程で、当然ながらランディも協力者名簿に勝手に登録されており、女の始末を強要されるのも日常茶飯事という有様であった。
『デヴィッド・ミシェル・ガブリエル』なんて名前とは似ても似つかない、ロクでもないドン・ファンというのがデヴィッドの正体なのだ。

それが、初めて好きになって以来ずっと胸の中で密かに静かに15年以上も想い続けてきた"女"がシルベーヌ!?
これを知った時のランディはまともに反応するほど暇ではなく、二人が実際に付き合い始めた頃には不幸のドン底を味わっていて、冷やかす余裕など一切なかったが………ランディにしてみれば妙なカップルが成立したものである。

ところがデヴィッドは月に飛んで行ってしまい、それっきり消息を絶ちっぱなしだ。何の手懸かりも光明もない。

「でもね、ルマ。ルマの勘が当たったとして、子供には父親が存在するだろ。それはどうなる?"未婚のプリンセスの腹にいるのは反逆罪で手配中の政治犯ヴェルデ伯爵の子です"とは公表したくないだろ? 俺としても、それだけは遠慮して欲しいけどね」

ぷちっと ぶんこ
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CLIB NOTE
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