Pot aux Roses...

□† 秘密 †
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「ロイドを押さえれば証言が取れるな」
「ランカスターにも手が届くわよ」
「どうすっかな。あの人のエージェントも、そこまでの仕事はやらねぇし」
「口封じ?」
「事後のな」
ふう、とシルベーヌは声に出して「カインに売っちゃえば?」
「ロイドにもランカスターにも価値はねぇよ。俺の心臓でもオマケにつけるか?」軽口で応えて、煙草を咥える。「今のうちに殺っとくってのも難しいしな」
「結局、スペインの出兵案をノルマンディが認知しない限り王室の背信を完全に隠匿することは不可能ってことね」
「フェルディナン侯にもそこまでの権限はないからな」
火の点いた煙草を灰皿に置いて、手作業を再開する。
「吸わないなら消しなさいよ」
「勿体ないだろ」他人の迷惑など一向に無関心で平然とホザく。「他には?」
「ランカスターとロイドを仲介した男が生きているわ。テムズに流されたらしいんだけど、運よく助かっちゃったみたい。今オランダにいるのよ。ロイドもテロリストに関わっている割にはその人脈に明るくないようね」
言って、鋏で糸を切る。
「出来たわ」
「あ、俺も」
ランディも編み針で糸を始末した。
「で、これ何よ」ランディに出来上がったベビードレスを広げて見せる。白くてツヤツヤで、フリルが沢山ついていて可愛らしい。「また子供が出来たの?」
「"また"ってナンだよ」
機嫌よく煙を吹かすランディを、シルベーヌはじとっと見つめた。
「貴方の家にはミシンはないの? 大体どうして貴方がこんなものを作ってるのよ」
「ミシンぐらいあるよ。だから初めに言っただろ。ルマが作ってたんだけどね、3回も針で指に穴開けてんだ。黙ってらんねぇよ」
ランディが編んでいたのはベビーシューズである。
「ルマにミシンの使い方を教えてあげればいいじゃない」
「教えたけど全然ダメ。どうしても真っ直ぐに縫えないんだ。スピードが上がると手を放しちゃうし。だから手縫い。可愛いだろ?」
「そうね。可愛いわね。"自称愛妻家"さん」言いながらテキパキと片付ける。ルマのことなら何でも二言目には可愛いなんて言うバカには付き合いきれないとオーラで主張した。ダメとか無理とか言って甘やかさずにキチンと教えてやればいいのである。「いつ判ったのよ。パーティーの時にはそんな事言わなかったでしょう?」
「だからね、俺じゃないの」
ランディはソファにふんぞって足を組んだ。
「ルマは、おまえに贈るんだって言ってたよ。俺としては勘弁して欲しいんだけどルマは喜んでる。確認したら早目に休暇届、提出しろよ」
「私が?」

ぷちっと ぶんこ
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