Pot aux Roses...

□† 秘密 †
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「C'est de l'allemand.(ドイツ語だ=訳わかんねー)」
ハンドジェスチャーを加えておどけたら、更にジョディの機嫌を損ねた。
「こっちもドイツにはテンテコ舞いよ」持ってきた書類を、それでも静かにランディのデスクに置く。「今結果をまとめているところよ。夕方には欲しいんでしょ?」
「明日、指示を出すからな」
「だったらアリアーヌを連れて行きなさいよ。あそこ、そんなに忙しくないわよ」
「知ってる。けどジョディ。頼むよ」
ジョディは深い溜息をついて見せた。
「嫌な予感がしたのよね。私も指示を出してきてよかったわ」
「じゃ、そういうコトで」
ジョディが話の早い相手で助かる。ランディは立ち上がった。
「でもそんなに長くは付き合えないわよ? みんなランチ返上なんだから」
「俺もだよ。午後はヴェルサイユ。相手はランバール公だ。遅刻できねぇよ」


陸軍本部参謀総長のオフィスは地中深くにある。地下何階にあたるのか、誰にもよくわからない。とにかく参謀会議のフロアまでエレベーターで下り、そこからまた階段で暫く下り、漸く辿り着く。
陸軍No.2、参謀総長のオフィスには立派な受付ロビーがあって、専用の控え室もズラリと並んでいる。2日ぐらい待たされる人がいるからだそうだが、一体どんな理由で2日も待つのかは謎だ。
今日もロビーは同業者や納品業者やプレスで混雑し大盛況だった。

「相変わらずじゃねぇかよ」もうロクでもない予感に、ランディは舌を打った。「チェスなんかやってらんねぇよな」
当然オセロでもないだろう。
「ねえ、貴方と私に用があるんでしょう?」
不安げにジョディは呟く。エーリック大尉は受付に来訪を告げに行った。
「"私"は限定されてないけどな」ロビーのソファに腰掛けて、ジャケットの中のシガレットケースを掴む。「何か、女でなきゃ出来ないようなヤバい仕事があるんじゃないの?」
「まさか私を売るつもりじゃないでしょうね」
「売らねぇよ。ジョディはあのオジサンの趣味から外れてるしね」
「大佐」
エーリック大尉の呼ぶ声だ。見ると、エーリック大尉の横に参謀総長の秘書官バーロン大佐もいる。物凄い風格と威厳を漂わせ、ランディを睨むように凝視していた。
ヤケに対応が素早い。周りの順番待ちの人間共はどうするつもりだろうか。手に取った煙草をケースに戻して、座ったばかりのソファから立つ。
「お待ちいたしました」勝手に呼びつけたのに、バーロン大佐は上から物を言う。ちらっとジョディを見やって「ガルシュ少佐ですね」
「ええ。ご希望通りの"信頼できる女性士官"です」
「信じましょう」
バーロン大佐はランディとジョディに入室を促した。エーリック大尉も二人に続いたが、バーロン大佐が手で制止する。
「貴方は入れません。ここで待つように」

ぷちっと ぶんこ
petit lettre
CLIB NOTE
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