Pot aux Roses...

□† 秘密 †
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大方この二人の別れ際というのはこんなものである。甘ったれシルベーヌと根性なしランディは例え穏やかな挨拶から始まろうとも二人でいる限り殆ど決裂する。大体全部放り出して先に降参するのがランディで、気が収まらないシルベーヌの血液を更に沸騰させる。思春期を過ぎればそんな事はなくなったが、子供の頃は当たり前に顔面を殴られて鼻血が噴き出すという流血沙汰が日常茶飯事だった。股間に直撃を喰らって文字通り"玉砕"の憂き目にあった事も数知れない。仕返しなんぞしようものなら返り討ちされ、ロープを掴もうがタオルを投げ込まれようが構わずに全体重で踏みつけられた。おまけに周りの大人からランディだけが説教されて終わるのだ。

ランディにとってシルベーヌは『痛い姐御』。王女なんだと諭されても全然信用できないほど強いボス。
逆にシルベーヌにしてみたらランディは『易い子分』であって色んな意味で可愛がった。ランディに限らず同級生・下級生は全部"舎弟"で、皆がその度胸と頭の良さと腕っ節に頼り、シルベーヌは見事に応えてボスの座に君臨し続けていた。

ただ、シルベーヌは甘ったれなのだ。でも勝気すぎて甘え方が下手というか、それを知らないというか、とにかく間違った方に行きがちだ。
そして最初に『どうしたの?』と尋ねてしまうのが凡そランディで、早速お互いの神経を逆撫でし合い、結局ランディの厚意は名実共に踏みにじられる。気が合っているのか合わなさ過ぎるのかは不明であるけれど、デヴィッド(第三者代表)によれば《仲良し》だと周囲からは見られているらしい。

いつも通りの結末。いい加減にムカついたが、シルベーヌのむくれっ面を思い出し、ランディは美味しい一服を味わっていた。



9月に入り王母エリザベートが娘のマリー・テレーズを連れて故郷エジンバラへ里帰りした。これは毎年恒例の年中行事だが、これまではせいぜい2週間程度の日程であったのに今年はシャルルが国王に即位したからか2ヶ月という長期滞在になった。
エリザベートの本心としては娘をエジンバラ権門、せめてそれに近いイギリス貴族に売り込みたいのだろうと思われる。しかしテレーズが一筋縄ではいかない気性の持ち主である為に上手くいかないようだ。それでも母は諦めないらしい。

親衛隊長クルドー大佐が約束通り部隊を率いてイギリスへ行ってくれたので、近衛は普段は全くタッチしない王宮の警備をやらなければいけなくなった。親衛隊の幹部もゴッソリと同行したから、近衛の大隊長グリュヌ大佐が副官代行、そしてランディが親衛隊長代行兼務である。
近衛も宮殿内の安全に従事してはいる。一方的にやってくる人々がタダの観光客か、またはロイヤルファミリーのお友達か、それとも犯罪者かを確認する程度には。その後の面倒は全て親衛隊のお仕事だ。つまり受け入れた観光客、王室関係者、有象無象のお貴族様たちの世話係は親衛隊なのである。他にも敷地内の警護などやっているのであるが、メインはこれ、と言ってもいいほど比重の大きな仕事らしい。

ぷちっと ぶんこ
petit lettre
CLIB NOTE
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