太陽

□《第四章》
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ジュリア、俺はとても幸せな男だと思う。
きみを失ったとき、俺はこの世の全てを憎み、責めた。
自分自身を憎み、責めた。



生きのびたことを罪と恥じ、生きてゆくことに絶望した。


もう二度と、命をかけて守るべきものを与えられる事はないのだと、老いの緩やかな魔族の血を呪った。




だが、今は違う。

あのとき、先に逝ってしまったきみの魂の、罪や傷を全部、俺が背負いたい。

天国とかいう場所が本当にあるのなら、きみの心がそこに行けたと信じたい。

そしてもし、再びどこかできみが生まれるのなら、それが幸せな生であることを祈ってる。
俺みたいな奴と出会って、道を間違えることのないように。






ジュリア。






俺は今でも生きてるよ。
きみを忘れることは出来ないけれど、もう一度、大切なものを見つけたんだ。












「有利、この問題間違ってる」

「うぅ〜っ、もうヤダ」

「なに言ってんのさ、赤点で補習になってもいいのかい?」

「それはもっといや〜」

「じゃあ、やり直して」

「う〜……ι」

「ほら頑張って、この問題が解けたら、僕がお土産に持ってきたケーキ食べよう」

「ケーキ……」

「そう、有利の好きな苺の沢山乗ったタルトもあるよ」

「………」



健ちゃんの甘い誘惑に負けて、あたしは机の問題集と闘う。



只今、健ちゃんに家庭教師を頼み、テストに向けて猛勉強中です。


健ちゃんは進学高校に通っている秀才だ。
誰かさんみたいに『お兄ちゃんと呼べ!』とか『コスプレ』を強制してくる事もない。



「勝利さんなら、喜んで教えてくれるだろ?」

「冗談じゃない!あんなバカ兄に頼むくらいなら、赤点とって補習したほうがましよ!」



健ちゃんの呟きに即答する。







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