太陽
□《第八章》
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私(わたくし)のこのような恥ずかしい姿をご覧になったら、陛下はなんと仰るでしょう。
世が世なら流し目だけで一財産稼げそうな麗人は、水を張った樽に片腕を突っ込み、ぐるぐる回る洗濯物を眺めながら、消耗して麻痺しかける頭の中で主の笑顔を思い出そうとしていた。
「アニシナ殿」
「なんです」
自分では何一つ動こうとせず、腕組みをして学者然と立っている女発明家に、ギュンターは細い声で訴える。
「く、苦しいのですが」
「当然です。もにたあに多少の苦労はつきものですからね」
「その、もにたあというのは、いったいどこの国の言葉なのですか」
「《も》っといいもの造るため《に》、《あ》なたの身体で《た》めしたい、の略です」
どう略しても『もにあた』だ。
だが、やっぱりやっぱりやっぱり実験台だったのだ!
グウェンダルが幼馴染みであるアニシナを避けていたのは、実験台にされたくなかったからだ。
こんなことに度々付き合わされていれば、名前を聞くだけで苦い顔になるのも納得がいく。
だが判ったときには遅かった。ギュンターは今や彼女の支配下だ。
「しかし見たところ、私の魔力を使って水と洗い物を回しているだけにしか思えないのですが………これの、どの辺りが新発明なのでしょう」
「布が巻き付かないように、からまん棒理論を応用しているのです。
とはいえ貴方の疲れ具合からすると、どうやらこの全自動魔力洗濯機、消費魔力が大きすぎるようですね。これからは我々魔族も省えねの時代、従ってこれは……」
魔女の瞳がきらりと光った。
「失敗作です!」
マッドサイエンティストならぬ、マッドカジカリスト、フォンカーベルニコフ卿アニシナ。
もっと早く言ってやれ。
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