太陽
□《第十二章》
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やたら派手な、あたしと勝負だ宣言をかましたわりには、死にかけたゲーゲンヒューバーを戸板に載せてそれじゃ今晩はこのへんでなんて地味に引き上げた。
宿に帰還してみれば時刻はすでに明け方近く、もうじき朝日が昇る。
急いで駆け付けてもらった医者の話では、今夜が峠という事だった。
辛うじて息をしている状態の彼を、コンラッドのベッドに横たえるとグレタはそこから離れなかった。
「陛下は近付かないでください。できたらヴォルフと、隣の部屋にいて」
「なんで?だって彼はもう刀を握る力もないじゃない。あたしだってあそこまでの重症患者に暗殺されるほどひ弱じゃないって」
「いーや、油断はできないぞ。なにしろお前のへなちょこぶりは、天然記念物かと保護したくなるくらいだからな」
ひょっとして誉められているのだろうか。
壁に後頭部を預け、寝不足のせいで充血した目を擦りながらヴォルフラムは言った。
「しかし腑に落ちないな。ゲーゲンヒューバーは何故お前を狙ったんだろう。
コンラートとの間に遺恨があったとはいえ、あいつは反王権派ではなかったのに」
「ヒューブはユーリが魔王だと知らないはずだ」
「あ、そうか」
確かにグレタが訴えていた。『金髪の王様じゃなかった』って。
ということは、血盟城にくる前に接触があった二人は、眞魔国の国王はツェリ様であり、隠し子だと申し出れば対面しやすいと情報を整理していた可能性がある。
悲しいことにその情報は半年前のもので、最新版とはいかなかった。
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