太陽
□《第七章》
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「気をつけなさい、ゆーちゃん!男なんて皆、狼さんなんだから!
あぁあ〜!!俺の可愛いゆーちゃんがくそメガネの毒牙に!!」
「いってきまーす」
バカな勝利は無視して家を出ると、ちょうど健ちゃんが迎えに来たところだった。
「それにしても、なんでまた水族館?」
「ふられたんだ」
「Σは?なに!?あんた彼女いたの!?」
「違う。告白してデートに持ち込もうと思って、前売りチケット買っといたのに、やっぱりふられたんだ」
「じゃあ健ちゃん、この暑い中告白したんだ」
「いや、してない」
「はぁ!?ι」
ふられたと、ふられたも同然とでは意味が違うと何度も説得してみたけれど、健ちゃんは気弱に微笑むばかりで、前向きになろうとはしなかった。
もったいないのは買ってしまった前売り券。
払い戻すのも面倒だし、誰かにあげるにしても期日指定は厄介だ。
七月末の土曜日では、ほとんどの友人は予定が入っている。
そこで、今日一日家でまったりを決めこんでいたあたしに、幼馴染みからの悲壮感漂う電話がかかって来たのだ。
「あ〜あ、こんな暑い日に外に出るつもりなかったのに。本当なら、家でアイスを食べてるはずなのに……」
「……有利、キミはどれだけ僕をこき使ってると思ってるの?
成績が悪くなれば勉強に付き合わされて、宿題が終わらなければ、電話で泣きついて、テスト前になると……」
「判った、判ったってばもう。行きますよ。
行きますけど、そのパワーで彼女にぶつかれば、案外オッケーだったんじゃないの?」
幼馴染みは、ふっと空を見上げた。
芝居がかっている。
「渋谷だ原宿だなんてトレンディな名前のキミには、僕の気持ちは解らないのさ」
「……トレンディって、あんたホントは何歳?じゃなくて、原宿は違うでしょ、原宿は!ι」
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