太陽

□《第九章》
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「ユーリはもっと品があって洗練されている。こんな棒みたいな人間の女と一緒にするな!」

「待って!待って貴方たち、ユーリを知ってるの?」


少女は頭部を覆っていた布を落とし、月の光に目を凝らして相手を見た。
ウェラー卿とフォンビーレフェルト卿を交互に比べ、最後に金髪の美少年で目を止めた。


「貴方魔族の人ね。だってすごく綺麗な顔してるもの、ねぇ貴方たち、ユーリの知り合いなの?」

「あぁ、そうだよ。君は何故、陛……ユーリを知っているのかな?」



十六、七歳くらいだろうか。少女は唇に指を当て、少し考えるように黙ってしっまった。
長く濃い睫毛の下の瞳が、隠し事をできずに動いてしまう。



「あの……ひょっとして、二人を連れ戻すために?」

「?そうだよ」



コンラッドのその言葉に少女はやっぱりという顔をした。


「わたし、二人に直接会ったの。あぁでもお願い、二人のことは認めてあげて」

「なんのことだ?」



ヴォルフラムが訝しそうに聞く。


……なんだか非常に嫌な予感がする。



「二人はとても深く愛しあっているわ。
だってあの人、あの、わたし名前を教えてもらっていないんだけど、ヒューブの従兄弟の背の高い方とユーリは、とても息が合っていたもの。
駆け落ち者として追われていたけれど、それでも諦めずに逃げていたのよ」

「か、駆け落ち者だとぉ!?」


ヴォルフラムは顔を真っ赤にしてぷるぷると震えはじめた。
やはり先の街での情報をワクチン代わりに伝えておくべきだったか。



「えぇ、そう。それなのに可哀想に、手錠で繋がれてしまった上に、捕まってしまったわ。
お願い、二人のことは許してあげて。そしてどうにか助けてあげて。
わたしが力になれれば良かったんだけど、一人で抜け出すのがやっとで……」

「では君は、ユーリ達の居場所を知ってるんだね?」

「少なくとも何処に連れて行かれるかは、判るわ。わたしもそうなるところだったから。
正式に別れると誓えなかった場合……」



サイズの合わない服に掌を擦りつける。




「寄場送りにされてしまう」






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