べーこんれたす缶

□政宗様の第二衣装はこじゅとおそろいで色違いだと言い張る話。
1ページ/1ページ






「Hey!小十郎、ちょっとこっち見ろよ!!」



スパーン!と豪快に開けられた襖。そろそろ壊れてしまいそうなほど重傷なそれを頭の片隅で心配しながら、小十郎は目の前の主に視線を向けた。



「政宗様、それは…」



新しい陣羽織に身を包み、いいだろ?と眩しく笑いながらくるくると回ってみせる政宗。それはそれは殺人的な可愛さだった。



「な、どうだ?」


「お美しゅうございます。貴方様には青がとても似合う。戦場でも映えることでしょう。兵達の士気も上がります。さきの戦ではそれをお召しに?しかし政宗様、些か装備が軽いのでは?一国の主なのですからもう少し、」




はっ!!

そこまで言い掛けて、小十郎は気が付いた。政宗がむすっと膨れている。このまま小言を続けていれば確実に機嫌を損ねてしまうだろう。少し唇を突き出して膨れているところも、それはそれは可愛らしいのだが。上機嫌な主の方が可愛いことを小十郎は知っている。




「や、何でもありませぬ。次の出陣は是非それをお召しになって下さい。この小十郎、死しても貴方様の背中を守ります故に。」



「それで?」


「………は?」

「だから、他になんか無いのかって言ってんだよ!」

「と、とてもお可愛らしく…」

「だから?」

「その、とても似合っております。」

「他には?」




それからも政宗の質問攻めは続いた。小十郎にとって政宗を甘やかし褒めちぎることはとても容易であった(というか政宗が可愛いのは当然のことで、小十郎は本当のことを言っているだけだった)が政宗の表情はどんどん曇っていく。

嗚呼、困った。

いつもならば、いつもならば、少し照れたように外方を向き、耳まで真赤にしてみせるのに。



「…もういい。こじゅなんて嫌いだ!」



入って来た時の三割増しの力で襖が閉められた。襖ももう限界である。しかし小十郎の方が限界であった。



「ま、政宗様…」



“こじゅなんて嫌いだ”

頭の中で、ぐるぐるぐるぐる、繰り返し反芻しては、自分で落ち込む。とても燃費のいい自傷行為である。

政宗に嫌われては生きていけない。
小十郎には政宗しかいない。
政宗がすべてだ。



しばし小十郎は立ち尽くしていたが、ふと我にかえると、慌てて政宗の後を追った。

ここで追いかけなければ、更に機嫌が悪くなる。

小十郎の十数年の経験から弾き出した答えは一つ。今すぐ全力で政宗を追わなければ。





「あ、小十郎じゃん」


どしたの、何急いでんの?



へらへらと話しかけてきたのは成実だった。

急いでいるとわかっているなら話しかけないで欲しい。

と、口に出してしまいそうだったが寸前のところで止めておいた。



「あ、そいえばね、俺さ、さっき梵にもこんな風に話しかけて凄く怒られたんだよね。何でだと思う?ひどくない?俺はさ、ただね、元気かなー、と思って話しかけただけなのに。疲れてるのかな、すごいイライラしてたんだよ。小十郎何とかしたげて?あ、待ってもしかして、小十郎って梵追いかけてんの?」



「おや、二人とも何をしているのですか。」



小十郎のイライラはピークに達していた。

急いでいるのにも関わらず、成実はべらべらと喋るし。
何をしているのか、なんて見ればわかるだろう!
目の前の馬鹿に足止めくらってるんだ!!(少し言い過ぎたことを小十郎は一秒後に反省した)




「そういえば景綱、殿の陣羽織。見ましたか?」

「あ、それ俺も見たー!」

「見ましたが……、それが何か?」

「え、うっそ、気付いてないの?」

「お前に見せるんだと喜んでいた殿が、さっき怒りながら歩いていたわけが漸くわかりましたよ。
本当に鈍いですね、殿のお気持ちお察しします。」

「ど、どういう意味ですか、それは。あの陣羽織に何か…?」




本当にわからないのですか?


あの陣羽織、似てると思わない?




くるくると回ればひらり翻る裾。

背中には月。美しい三日月。

色や細部こそ違えど、あれは。




そう。
自分のそれと、よく、似ていた。




気付いた瞬間、綱元にも成実にも目もくれず、思わず駆け出していた。


なんて可愛らしいお方なのだろう。
どんな思いで、何と言って作らせたのだろうか。
ご自分では言えずに、俺の口から出てくるのをひたすらに待っていたのだろうか。
あれを着て、出陣しようと思っていらっしゃったのだろうか。


ああ、もう。
好きだ、愛している。
わたしのかわいいひと。





「政宗様!」



渾身の力で思い切り襖をあけた。声も掛けずに、失礼は承知。城内の襖は双竜の手によって壊滅寸前である。


目の前の主は既に着替えていて。その手に握られたるは陣羽織。今にも引き裂かれようとしていて。


「こ、小十郎!?何だよ、こっち来んな!!」


「そのような訳にはいきませぬ!」



小十郎はたまらず政宗を抱き締めた。
溢れだしそうな愛しさを押さえつけるかのように。



「政宗様」

「な!何だよ!」

「次の戦は、…揃いで出陣いたしましょう。」




おそろい。



嫌いだなんて嘘だ。

なんて赤くなって言うものだから小十郎の精神的外傷は完全回復した。が、襖は相変わらずボロボロのままである。



END
‐‐‐‐‐‐

伊達+伊達三傑が好きすぎてやってしまいました←

でも、お互いになんて呼び合ってるのか
設定があやふや←

個人的に

政宗様→小十郎、こじゅ
   →成実、成
   →綱元、綱

小十郎→政宗様
   →成実殿
   →兄上、綱元殿

成実→梵
  →小十郎
  →綱元

綱元→殿、政宗様
  →景綱
  →成実殿


とかだったらいい。

綱元さんとこじゅの関係が曖昧です←
異父姉弟の異母兄弟…
でしたっけ?
あれ、異母姉弟の異父兄弟…?

あー、
勉強不足ですね、すみません。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]