えぬえる缶

□馬鹿ですね
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今日も山が赤黒く燃えていた。

惨い殺戮を繰り返す織田を止めるため虎と軍神は手を取り合い立ち上がった。今、上杉軍は武田領で武田軍と共に機を伺っている。

明日こそ魔王を討ち取らんと、大地が震えあがるばかりの勢いで両軍の夜は不気味なほど静かで性急に過ぎさっていった。




「かーすが」


「…ちっ、何だ。」


「ちょ、女の子なんだから舌打ちとかするなよ」


「黙れ、ついでに死ね」


「いきなりひどくない!?もうちょっと俺様に優しくしてくれたっていいじゃん!ほら、今なんて二人きりなんだし?」


「うるさい、私は好きでお前と居る訳じゃないからな!謙信様が、共闘において連携は最重要事項だと仰ったからこうやってお前と作戦会議をしているんだ、謙信様が仰ったから仕方なく、だ!」


「はいはい、わかってますよーだ。」


「……………ちっ。」


「あ、ほらまたー。そんなはしたない子は軍神に嫌われちゃうぞー。」


「謙信様の前で舌打ちなどするか。むしろお前の前でしかしない。」


「もー、かすがってば、いきなり何だよ。照れるだろー?」


「御託はいい。とりあえず殴らせろ。」


「ぐぅ、いきなり鳩尾は卑怯だって…。愛情の裏返し?なら頼むから裏返さずにプリーズギブミー!」


「何だそれは」


「独眼竜の真似」


「似てないぞ」


「え、そう?旦那にはウケたんだけどなー」


「……はぁ。」


「え、ため息!?止めて、舌打ちより十倍傷つく!!」


「…もういいから、さっさと決めるぞ。いいかよく聞け、私は後方支援に徹するからお前は捨て身で前線に突っ込め、そしてそのまま死ねばいい。以上、解散!」

「ちょ、ちょちょ、待って、何それ!!何その単独行動!?かすがは軍神からなんて言われたんだっけ!?ねぇ!なんて言われたんだっけ!?」

「煩い煩い煩い!お前なんかと手を組めるか、それなら私は一人で戦う!」

「へー、じゃ主の言い付け破るんだー。つるぎ失格じゃない?」

「ちっ!、さっきから黙れと言っているだろう!?」



「けんかするほどなかがいいといいますが、すこしいいすぎですよ。わたくしのうつくしいつるぎ。」



「な、け、謙信様!いつから!?」


「あらー、どーもー」


「いいですか、つるぎ。われわれはつぎのいくさでおだをかならずとめなければなりません。そのためにおまえたちはちからをあわせて、ともにたたかうのですよ。」


「いや、で、ですが!」


「つるぎ、わたくしはしんじていますよ。」


「そ、そんな!」


「はーい、二人で頑張りまーす」


「ふふ、おまえたちはほんとうになかがいいのですね。」


「さ、佐助!お前だまれ、あぁ、謙信様待って下さい!誤解です!こんな奴と仲良くなんか!!」


「あーあ、行っちゃった」


「………お前はよほど私に殴られたいようだな…」





馬鹿ですね。



射殺しそうな視線と強く結ばれた口元、さらさら金髪と白磁のような頬を満月が照らした。


天の邪鬼と馬鹿と月と嘘と。




END
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さすけの馬鹿さが
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