ぞさ缶

□更新世
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ひどく乱暴にされることがある。それはそれは苦しくて、奪い取られるようで、貪られるようで。一応悪いとは思っているようだ、事後に一言ぽつり、すまん、と呟く。またやってしまったとでも言いたげに。疲弊しきった俺は今にも手放しそうな意識の中ぼんやりと、らしくない謝罪を右から左へ通過させる。普段はそんなではない。敵には冷酷に切りかかるが、仲間に対しては割と温厚。しかし夜になると時折、人が変わったようになる。魔獣の名を欲しいままにする男、獣のように食らいつくのだ。それはそれは嬉しそうに。そんなもんだから痛いけれどうれしくて求められているようでしあわせで、拒むことも出来ずに俺は夜をやり過ごす。黙って耐える。ただ本当に黙りこむと不機嫌になるので、多少嬌声は出す。それは出る、でもあるし、出す、でもある。きっとそのことも全部わかっているのだろう。そんな風にされても媚びる俺を夜の奴はどう思っているのだろうか。


その日の夜も、いつものあいつではなかった。奴だった。その日は殊更に機嫌が悪く慣らされることもなしに挿れられた。だが俺は痛いのだとも言えない。受け入れられる自分に吐き気がした。目頭が熱くなって視界が霞む。それは生理的な涙なのだと信じた。そんな俺を見て奴は眉間に皺をこさえて、動きは更に激しくなった。どうやら気に障ったらしい。揺さぶらるる俺は、どうして俺はあいつが好きなのか考えていた。他愛もない言い争い、ストイックに剣を振るうところ、大きな背中、ぶっきらぼうで口下手だけれどちゃんと優しいところ。言い出したらきりがないのだ。嫌いなところなどない。どこも好きだから、全てを受け入れる、痛みだって享受してしまう。好きだからだ。その気持ちが揺らぐことはない。だけれど夜になるといつだって、本当に俺はあいつを奴を愛しているのか、本当に奴はあいつは俺を愛しているのか信じていたものに迷いが生まれてしまう。俺の気持ちが足りないのだろうかと最終的には自己嫌悪に向かうのだ。お決まりのパターンだ。

ーーその時だった。小さな舌打ちと共に、ゆるい、と奴がそう吐き捨てたのは。俺はずっと奴が言うことは気にしないよう気にしないようにしてきた。あいつと奴は違うものなんだと思い込んできた。どんなにひどいことを言われたって傷つかずに流せるように。少し優しくされたからって奴にこころ震わせないように。ひょっとすると俺は、奴のことも愛していたのかもしれない。奴にとらわれないように、奴の中のあいつの面影を貪られながら必死に探してきたつもりだったのだけれど。




俺は泣いた。
確かに傷ついていた。





私の愛は許しだった。
彼のそれは奪うことで




‐‐‐‐‐‐

どうして私はさんちゃんを泣かせたいのでしょう幸せな2人を書きたい次こそは

そんでもって2年後に手を出せない私。皆さんどうしてるんでしょう、最近ゾササイト様ご無沙汰なんですよね。


20110417/椎衣
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