しかいの缶

□両手と花と警告
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ほんのり卑猥かもしれないです。















「…シカマルが2人いたらいいのに」


ぽつり吐き出した言葉は殺風景なシカマルの部屋で、事後の気だるさを引き摺るシカマルとあたしの2人だけに届いた。シカマルは任務で明日からしばらくを砂で過ごす。今日は二週間ほど会えなくなる前の最後の逢瀬。


「なに可愛いこと言い出すんだよ」


シカマルはピロートークの類を余り好ましく思っていない。こういうことになると口下手でめんどくさがりなので、事が済むと黙って抱きしめてくるだけ。だけど今日は違って、少し饒舌だった。


「俺が2人いたら、…どうすんの?」

「んとね、シカマルが2人だったら、毎日会えるでしょ、それにあたしの我が儘だって二倍通るし、木の葉も安泰よね!それからアイスは一度に三種類食べれるしー、」

「最初のはともかく、お前な…」

「何よー、いいじゃない別に!」

「へーへー」

「…もう!じゃあシカマルはどうなのよ?」

「あ?」

「シカマルは、あたしが2人いたらどうすんの?」



シカマルはばつが悪そうに後頭部をがりがりと掻いた後、少し息をついて、鋭いその目線をこちらにやって、煙草の火を押し潰すように消して、口を開いて、吐き捨てた。




いのがもし2人いたら、俺は、どっちか1人を閉じ込めてえ




そのほんの少しの狂気を孕んだ言葉にあたしはこころ震わせた。じゃあ閉じ込めてよ。そんなことは決して言えない。けれど、こころというには綺麗すぎる、あたしの生臭い秘密の場所を確かに打ちつけた。…なんて甘く汚い素敵な響き。閉じ込められたいと思わされてしまった。シカマル以外を見ずにシカマルだけを思ってひっそりと暮らせたら…。


「まぁ、2人とも閉じ込めたくなんだろうけどな」


そう言ってシカマルはもう一度私を組み敷いた。見透かされたみたいで同じように興奮しているみたいで、恥ずかしくも喜びを感じた。


あたしは1人しかいないけど、それでも閉じ込めたいって思う?


そんな言葉は、唇を強引に塞がれて胸に落ちていった。別に問かなくたって構わない。言葉じゃ穴は埋められない、これからその逞しい腕の中に閉じ込められるっていうのに、ありふれた安い言葉なんか意味を成すはずもない。

触れられて見つめ合って触れて耳元で吐息を感じたら、そのまま溺れた。



‐‐‐‐‐‐

ことばであなをうめてもー
みたさーれるはずなどなーい

久しぶりすぎてどうやって書いていたのか忘れてしまいました。
本誌も単行本にも置いてきぼり喰らってるので私はもう時代の流れは気にしないことにしました。(ハキハキと)


20110802/椎衣

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