庭球長編

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向日からのメールには、『状況がよく分からないんだけど、大変っぽいからすぐ来てくれね?』とあった。


……状況が分からない癖にメールするのか。
思わず口に出しそうになった言葉を呑み込んだ後、樺地を連れて早足で部室に向かう。思い切りドアを開けると、難しい顔をしながらウロウロとしている鳳と目が合った。




鳳「あ…跡部さんっ!」

跡部「岳人はいるか」

鳳「はい…えっと、奥に」




鳳の言う『奥』というのは、普段レギュラーがミーティングに使用している部屋の事だ。

早足で扉に近付き、先程と同様にドアを開ける。
向日は勿論、忍足や宍戸、日吉やジローまでが中にいた。

…が、見た事がない顔もいくつか。




跡部「……誰だコイツら」

忍足「それが、俺らも分からへんねん」

跡部「アーン?何故誰かも分からない奴等がここにいるんだ」




どこからか持ってきた毛布の上に2人、ソファーの上に1人。どいつも女だ。

だが氷帝の生徒なのかと聞かれると見覚えが無くて(生徒会長だから、全校生徒の顔と名前は大まかに把握しているつもりだ)、身に付けている服も明らかに私服。


俺に事を告げた向日を睨むと「毛布は文化部の所から適当に借りて来たぜ」と返ってきた。そうじゃないだろ。


「コートの近くに倒れていたんですよ。目を覚ます気配が無いので連れてきました」空気を察した日吉が、俺の欲していた答えを答える。
更に「あ、頭打ってるっぽいぜ。痣が出来てる」と付け足す宍戸。


…で、どうしろと?

覗き込んで宍戸が指した所を見てみる。
髪に隠れているから対して目立ちはしていないものの、確かに跡が残っていた。




跡部「なら今すぐ保健室連れて行くぞ」

向日「今日の午後は、先生は出張だって言ってたじゃん。もういないぜ」




そうだった、と言ってから気が付いた。
こういう時に限って、タイミングが合わないのは意外とよくある事だが…

…だがここでうろたえる様であれば、俺は部長やら生徒会長やらやっていない。
いかなる緊急事態にも迅速に対応出来てこそ、意味があるものだ。




鳳「跡部さん、どうしましょう…」

跡部「病院に連れて行けば良い。樺地、至急電話しろ」

樺地「ウス」

跡部「お前らも手が空いてるなら手伝え」

鳳「は、はい!」

忍足「ま、これはしゃあないわな。協力するわ」




この場では、これが最良の選択だろう。




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