よろず

□ねこじゃらし
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天真爛漫
顔も良く才能もある
自分とは何一つ違う
だから彼奴が何故自分を選んだのかこれっぽっちもわからない


『で、こないだは遊園地にですね』


「オイ…」


何ですか?嬉しそうに笑う
コイツは俺から話し掛けられるのか好きだから


「報告は有難い。しかしこの態勢は何だ」


俺の部屋で二人きり
後ろから抱き着く様に座っている
しかし俺の方が上背があるせいですっかり隠れてしまっている


『いや、触ってたいじゃないですか』


至極シンプルな解答に頭を抱えそうになった
さも当然と言わんばかりの口調が腹立たしい
意思表示の為少し身を捩れば負けじと腕に力を込めて来やがる
全く忌々しいガキだ


『あ、もしかして前からの方がいいですか?』


「断る」


『即答しなくても!』


「大体にして俺みたいなのを抱き締めて何が楽しい」


今度は少し空いた間
最初にも言った
コイツは顔も良く才能もある
女なんか放っといても寄ってくるんだ


『そんなの、好きだからでしょ?間柴さんが』


「なっ…!馬鹿か!いや馬鹿だお前!」


『馬鹿でいいですよー。言われ慣れてますから』


つい、と唇を突き出した後また笑う
くるくると代わる表情は見ていて飽きない
可愛いとさえ思う自分はきっと能天気なコイツらに毒されているのだと思った


『でも本当に好きですよ。それにこの態勢もね』


「あ?俺は動き辛くて仕方ねぇよ」


『間柴さんの綺麗な項、すき。形のいい後頭部もすき。細い腰も長い腕も全部すき』


それを一気に味わえる態勢だから、と
素直な奴は嫌い
へらへらしてる奴も嫌い
でも


「なつかれるのは嫌じゃない…」


『え?何がですか?』


「別に」


後ろから小さく笑う声がした
言葉少なな自分の言いたい事を理解したのだろう
案外聡い所も嫌いじゃない


『お腹くるしくないですかー』


「…別に」


丸で毛並みのいい猫だな
真逆の物を疎ましく思う程に、同じ位焦がれている
自分に無い物を全部抱えてコイツは世界の舞台に立つだろう
あ、その前に幕之内がいるか


「なんかムカつく」


『えぇ!?何でですか!?』


まぁ、コイツが世界の舞台に立つその時は、アリーナ席で見ていてやろうと思った












END

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