忍
□瞬
1ページ/2ページ
『やっと来た』
太陽に忌み嫌われる俺達にとっての唯一の支え
それが新月
今日は愛しいキミに出会える日
佐助は森に来ていた。
辺りは生き物の気配もなくしんとしていた。居るのは佐助ただ一人。
いきなり強い風が森を吹きぬけ、佐助の髪を揺らした。
「おっと、強い風だねぇ」
風が吹き抜けると辺りはしんと静かになった。
「・・・来てたんだ。小太郎」
佐助は新月を眺めながら後ろにいる人物に言った。
「久しぶり、逢いたかったよ」
小太郎の服装は漆黒の羽根をまとった忍装束であり、それはさながら闇に生ける鴉のようだ。
兜のせいで顔は見えないが、佐助が話しかけたことで殺気を放っていた小太郎のオーラがやわらかくなったのが分かった。
「隣に座っていい?」
「(コクン)」
小太郎の隣に座ると佐助は新月を眺めた。
「この一ヶ月凄く長く感じたよ。今日をどんなに待ち焦がれていたか。・・・小太郎、」
「?」
「兜取っても良い?小太郎が見たいんだ」
「(コクン)」
小太郎の許可を得ると佐助は兜の紐を外し、ゆっくり取った。
兜の下には、赤い髪に忍化粧をしていた顔が隠れていた。
「・・・やっと小太郎に逢えた」
赤い前髪に隠れた顔のラインを撫でるように、存在を確かめるように佐助は触った。
自分の顔を撫でている佐助の手を小太郎はそっと掴み、その手を自分の胸に置いた。
「小太郎?」
小太郎の意図が分からず佐助は困惑していた。すると小太郎はそっと佐助の耳元で囁いた。
『俺はちゃんと此処にいる。佐助の目の前にちゃんと』
佐助は一瞬驚いたがすぐ笑顔になった。
「ありがと小太郎。大好きだよ」
「///」
佐助がそう言うと一気に顔が赤くなり、小太郎は顔を隠した。
「照れてるんだ。可愛いなぁ小太郎は」
Fin