Novel

□身近な者の死
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目の前に見えてるのは全て夢で嘘で、普段と変わり無く目が覚めたら現実が見える……そうに決まってる。

だって、そうじゃないとあまりにも無感情だ。

痛みがある夢なんて何時でも視るじゃないか。
現実的過ぎる夢なんて何時でも視るじゃないか。
感情が揺らぐ夢なんて何時でも視るじゃないか。

そうじゃないと嫌だ。
嘘だって言ってくれ。

じゃないと、今度こそ壊れて無くなってしまいそうなんだ。


「目を、覚ましてくれよ」

───ジョン。
俺は今、お前が目の前で終わりを告げようとしている夢を見ているよ。

開かれる事の無くなろうとしている瞼を、必死に覗き込んでいるんだ。
またあの綺麗な蒼い瞳が俺を映すのを信じて。

年老いた俺が、お前を英雄と崇め憧れの視線を向けていたり、未だに伝えられない淡い恋心の目で見て追い求めているなんて……情けないだろうな。

「……何で、俺も一緒に連れて行かなかったんだ。」

握った手の感触は、まるで別の物のように冷たかった。


目の前に見えてるのは全て夢で嘘で、普段と変わり無く目が覚めたら現実が見える……そうあって欲しい。

だって、そうじゃないと堪えられそうにないんだ。

痛みがある夢なんて何時でも視るじゃないか。
現実的過ぎる夢なんて何時でも視るじゃないか。
感情が揺らぐ夢なんて何時でも視るじゃないか。

そうじゃないと嫌だ。
嘘だって言ってくれ。

じゃないと、今度こそ壊れて無くなってしまいそうなんだ。







END
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