Novel

□Follow Me
1ページ/2ページ

胸元の空洞から真っ赤な血が徐々に広がって、誇らしくも儚げに咲いた白い華を染め上げていく。

────それは、純潔と呼ばれる星の華と同じくらい清いだろうか。

硝煙の臭いが、凛とした匂いの中に溶けて淡くなる。
余韻さえ残さず消えて逝こうとしている。

妙な事を考えているとは思っていても、流れ出る命は酷く綺麗だと思った。

握られた『愛国者』は、酷く重かった。



……力強い戦士の顔をした貴女が、優しく慈しむように俺に向かって愛情を与えてくれた時の顔を、今でも忘れられない。


だが今はどうだ?

哀しくも充たされた顔で俺の目の前に倒れている。

全く知らない顔だった。
見たことの無かった弱さを見せていた。


彼女に施した救いは、本当に救いだったのか?
救いという名の偽善ではないだろうか?

答えなんて出ない。

ただ、奇しくも俺にとっての終わりでもあると告げてきただけだった。


────俺に全てを捧げて忠誠を誓った貴女……貴女に全てを捧げて忠誠を誓った俺。

身体の半分を失った俺に、未来なんて優しいものは無いだろう。

知っていれば、変える事が出来ただろうか?
……知ったところで、幼い俺は何をするんだ?

護れるだけの力があれば、喪わずに済んだか?
……護ろうとした者の全てを知らなかったのに?


考えるだけ無駄だ。

縋って泣けたら、どれだけ楽だっただろう。
後を追えたら、どれだけ充たされただろう。


縋る事さえ出来無いのは、絶望以上の虚無感に苛まれたから。
後を追えないのは、貴女の望んだ事だけを叶えた弱い俺だから。



共に逝けたらと望む俺は、もう俺では無いのだろう。

ただの人形だ。


「……共に……逝けるわけがない」

綺麗な白の世界。

これから目の前に広がるのは、先の見えない闇だろう。


俺は、俺ではない。
今までの何かを失って、新しい何かが動き出した。

弱い俺は、貴女の護ったものの意味を知ることはない。






Follow Me…………

Follow Me……

Follow Me.





共に逝けたら、答えは見つかるのか。






end
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ