Novel

□甘え下手の甘え方。
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ありがとう。

言うのも言われるのも、何故だか何時まで経っても慣れない。

言われ慣れていないから?
言い慣れていないから?
多分……いや、きっとそうなんだろう。


「すまん。」

「構いやしないさ、謝られるような事じゃない……礼を言われる事だ。」
───まったく、謝ってばっかりだな……お前は。


からかうような口調。
俯いていた顔を上げて何か言い返してやろうとしたら、苦笑いを浮かべて頭を撫でてくる親父と目が合う。

意気込んだ気持ちも、一気に萎んだ。


「どうした。傷が痛むのか?」

反撃を予測していたのであろう親父は、俺が黙っていることに心配になったんだろう。
兄弟と喧嘩して出来た傷が痛んでいると勘違いしてる。


「親父。」

「ん?」


ぎゅっと抱きついてみる。

「どうした、急に甘えてたりして?」

「……ありがとう。」

最後の方は、恥ずかしくて小さくなっていた。
顔が熱いから、おそらくは真っ赤になっている。


「……どういたしまして」

呟いたみたいに言った親父の心臓の鼓動は、何故か速くなっていた。


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