Novel

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〜Naked side〜

完全な結末。
望まずとも願ったシナリオ。

俺も、そう長くはない。
身体に回り出した死の毒は、余分な時間は与えてはくれないだろう。

「ボス、あんたが正しかった。」

現在という定義はとても曖昧だが、過去にこの場所から始まった呪いは、今漸く終わりを迎えた。

結局、滅茶苦茶にしてきた全てに俺自身が勝つことは出来なかった。
そもそも勝ち負けの問題でもなかった。

「世界を変えることではなく、ありのままの世界を残す為に最善を尽くすこと。
他者の意思を尊重し、そして自らの意思を信じること、それがあんたの意思だった。」

────やっと、あの時の行動の意味、貴方の勇気の真実がわかった。

そして、貴方を手に掛け死んだと思っていた俺は、実際は生きていた。

貴方の死を理由に、愚かにも自らに目を向けず狂気に走った。

ならば何故終結したのか。

俺自身が、あの時よりも強くなったわけではない事は明白だ。
まして、中枢にいながら茅の外だった。

解らせてくれたのは……強かったのは、彼だった。

俺にとっての救いと、彼女の願いを、決められたシナリオから解き放たれる訳でもないのに、自分の意志だと言って長い年月を掛けて叶えた。

葛藤や苦悩は並大抵のものではなかった筈なのに。

強かった……憧れる程に。
其処に彼女の面影を見出だすほどに。



───最初で最後の敬礼に、想いの全てを捧げた。
貴方が、そして彼が許してくれることを願いながら。
全てを知った今、俺達の犯した過ちを許してくれるだろうか?


崩れる身体、薄れる意識。
咲き誇る星の花が、遠いあの日を思い出させる。
あの日の貴方も、今の俺と同じだったのだろうか。
背中に感じる冷たさに段々と同調していく感覚を味わいながら、嬉しいのか哀しいのか解らない喜びを感じ、死んでいったのだろうか。


「ボス、蛇は一人で……いや、蛇はもういらない。」

流れる涙は生理的なものか、或いは感情からか……区別がつくほど意識は無い。

ただ、それは酷く熱く感じた。


持っていってやろう。
元凶たる俺自身が。
それで終わるのなら、彼の為になるなら、幾らでも背負ってやろう。

たとえ傷が残ったとしても、少しは軽い方が良い。

親として……兄弟として与えてやれる、最大限の愛情とせめてもの償い。

恩着せがましいと怒るだろうか────

胸中で苦笑いを浮かべるも、葉巻を取り出す腕には最早微塵も力が残ってはいない。
どうやら最期の一服さえまともに出来ないらしい……諦めかけた時、口許に触れる懐かしい感触。

目線で影を追えば、戸惑いを隠さない彼が居た。

───優しさに触れたのは、何時以来だろう。
大切な人と味わった、仲間たちと共有した、短くも長く感じたあの優しさ以来ではないだろうか。

息子と呼べる彼に、初めて愛しさを感じた。

「いい、ものだな……」

涙は、星の花に溶けて消える。

最期に見えたのは、懐かしい景色だった……────


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