蛇一家でどたばた。



「……」
「暑い……」
「アイス食べたい。」

揃いも揃って床に転がる奴等の顔は、この糞暑い中で見るには些か頂けない。

「……そのだらけた態度をどうにかしろ。」

一体何が悲しくて似たり寄ったりの顔を見なければならないのか。
その上、今目の前でぐだぐたしている奴等の顔に自分の顔も似ているとなると……暑さも重なって病みそうだ。

「……普段はこの糞暑い中でも平気で暴れまわる癖に、一度バテると取り返しがつかんのか?」

蛇さながらの目で睨みつけてやれば、やはり賢いソリッドが一番に跳ね起きる。
しかし寝癖がついた髪はそのままだし、パンツ一枚だけの何とも小垂れた姿だ。
それにまた眉間に皺が寄る。

「あ……すまん。」
「わかればいい。」

急いで(それでも畳んで置いてあるあたり、几帳面な方か)服を手繰り寄せて、謝ってくる。
気付いただけましだ。

「どうにかしろ、見ていられん。」

喋ると同時に顎で馬鹿で阿保な状態を晒している奴らを指せば、着替え終わったと同時に了解と短く返事を返して、台所へと消えていった。
続いて冷蔵庫の中を物色する音。

我が家では、ソリッドが台所の使用の全権を握っている。
つまり、冷蔵庫の隅から隅まで熟知しているのはソリッドだ。

まあ此処にいる奴らは家事は粗方の事は出来るのだが……昔からあいつが全てやっていたから、癖が抜けない。

「ソリダス……」
「ん?」

台所から出てきたソリッドは怪訝な顔をして、財布を片手に持っていた。

「どういう訳か、冷蔵庫は殆ど空だ。」

───アイスが在ったんだが、ゴミ箱に容器だけ入ってる───そう言いながら、私に財布を渡してきた。

(これは、不味い気がする。)

内心冷や汗をかきながら、二人してとある方向を見る。

「……あれ、まだ開けてなかったはずなんだ。」
「心当たりは。」
「俺は無い、お前も無いと思う。」
「当然だ。」

私は至って冷静に、ソリッドはじっとりと睨みつける……その視線を受けている微動だにしない二匹。
これは不味い、本当に不味い。
渡された食費の入った財布をしっかりと手に持ち、静かに席を立つ。

「誰が、全部食べた?」

尋ねる声は冷ややかすぎる。
南無三……確か日本では最悪の事態になったらそう言うらしい。

僅かに跳ねる二匹の肩。

「お前らかぁあぁあああ!!」

血管が切れるんじゃないかという怒号が響き渡った。

普段は意外と大人しいソリッドだが、こうなったら誰も止められない。
暑さのせいで頭も沸いていたとしたら、尚更止められない。

「少し、出てくる。」

一応知らせて置いて、静かにリングアウトした。

乱闘のゴングは、今鳴ったばかりだ。



.


何かあれば。



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